主に独立起業などで、「どうすれば成功できますか?」と質問する人がいます。成功を目指すのは自然なことですし、逆に失敗したい人なんていません。実際、私も相談をもちかけられた際、同じようなことを聞かれた経験が何度もあります。ですから、成功者がたどった道のりや実際の行動を知り、それを真似ることで自らも成功したいと考えるのでしょう。しかし、この質問を他人に投げかけている限り、残念ながら成功には至らないと思っています。
成功とは何なのか
「どうすれば成功できますか?」
「成功の秘訣を教えてください」
こう質問するとき、頭の中にはどのようなイメージを“成功”として思い描いているのでしょうか。たくさん稼いで生活に困らない状態なのか、常に仕事で飛び回って事業を拡大させ続けている状態なのか。同じ成功でも、人それぞれ定義が異なります。
例えば私の場合、金持ちになりたいという思考はありません(そもそも成功していませんが…)。もちろん、ある程度の収益を出すことは前提ですが、お金より時間を優先しています。十分な収益が出ているのであれば、さらに拡大を目指すのではなく、より自由な時間を確保しながら収益を維持したいという考えです。そのため、もし「とにかく稼ぎたい!」という人が私からアドバイスを受けたとしても、たいして役には立たないでしょう。なぜなら、私にとって“稼ぐこと”は成功の中心に位置しないのですから。
もし「稼ぐ」ということが成功イメージの中心にあったとしても、その規模や稼ぎ方、あるいはそれ以外の望む環境などは十人十色です。成功とは、自らが自らの求める成功イメージを強く持ち、そのために必要なことを考え抜きいて行動するからこそ掴めるもの。もちろん、成功体験を聞けば、その中にヒントはあるかもしれません。しかし、他者の成功を聞き、それに従って行動しようとする限り、自分にとっての成功は得らえないでしょう。
他者とは違うことが多すぎる
成功者と呼ばれる方の多くは本も出版しており、それを読んで影響を受ける方は多いでしょう。その中には、著者が成功するまでの道のりや、具体的なノウハウなどが含まれています。私も20代の頃は、そうした本をよく読みました。仕事において、そのノウハウを実践してみたこともあります。
しかし、誰もがこれまで培ってきた経験やスキル、知識など異なります。あるいは性格も違いますし、独立起業するタイミングだってそれぞれです。タイミングが良く市場ニーズに合ったサービスを打ち出せて成功できたかもしれないし、起業前の経験・スキルが強みとなって成功できたかもしれない。でも、それは他者には真似できないものですから、当然ながら同じ道を歩むことは不可能でしょう。
例えば「がむしゃらに営業し、人脈を築くことで事業を拡大していった」という人がいるとします。しかし、その人は経験に基づく高い営業スキルがあるかもしれないし、性格的に人から好かれるタイプだったのかもしれません。そもそも、事業自体の市場ニーズが高く、すでに「知ってもらえば売れる」状態にあった可能性もあるでしょう。また、“営業”といっても手法はさまざま。そして向き不向きがあります。さまざまな面で違いの大きい他者の成功体験は、残念ながらそのまま自分に置き換えることは困難なもの。参考にできる部分は多々あるものの、やはり「自分なりの方法」を自らで考え、組み立ててて実践することは避けられません。
体験からヒントを得る
誰かが歩んできた成功までの道のりに、何も学びがないわけではありません。そのまま真似るのではなく、参考にして自分なりの成功方法を導き出すのがおすすめです。ですから、「どうすれば成功できるか」と質問するのではなく、単純にその人がこれまで歩んできた体験(ストーリー)を聞いてみてください。
どんな考えに基づき、どのように行動してきたのか。その一つ一つは、きっと参考になります。大切なのは、そこで真似るのではなく「自分ならどうするか、どうできるか」と置き換えて考えること。得られたヒントを、自分の経験やスキル、特性に合わせてカスタマイズしてみます。自分とは違った考えがあることを学ぶだけで、きっと新しい発見があるでしょう。そういう意味で、成功者の書籍も有効なツールです。
ここで是非ともおすすめしたいのが、失敗体験も聞くこと。ゼロとは言いませんが、まったく躓くことなく成功に至る人なんてほとんどいません。本人が失敗と認識していなくても、恐らくさまざまな苦境を乗り越えていることでしょう。そこには、成功体験以上に学びとヒントが詰まっています。ただ、こちらから聞かないと失敗体験は話してくれない人は多いですし、書籍には載っていないことも多いので注意してください。
成功とは誰かに教わるものではなく、自分自身で考えてつかみ取るもの。だからこそ、自らが望む本当の成功に至れるのではないでしょうか。まずは、自分にとって成功とは何なのか、自問自答してみると良いかもしれません。