部活動の地域移行、本当にそれで良いの?

地域差はありますが、全国的に部活動の地域移行が進んでいます。これは、いわゆる部活動による教職員への負担減を目的としたもので、簡単に言うと「中学部活動は外部のクラブに任せよう!」というもの。ただ、これまで子どもたちの指導に携わってきた身として、ちょっと待てよ…と思うところが多いので自分なりの考えを綴ってみます。考え方は人によりますので、一つの意見として参考にご覧ください。

地域移行の形式

全国すべての自治体を調べたわけではありませんが、地域移行の形式は全国統一ではないようです。ざっくり見た限り、以下の2つに分かれます

  1. 平日土日とも完全にクラブでの活動
  2. 平日は学校(これまで通り)で土日のみクラブで活動

共通しているの点として、大会は学校ではなくクラブとしての参加になること。チームスポーツだと課題も違いそうですが、ここでは私が専門とする陸上競技の視点で書かせて頂きます。

結論としては、「1なら良いけど2は微妙じゃない?」というのが私の意見です。ただ、私が居住する千葉県印西市をはじめ、これまで相談を受けたことのある近隣エリアはいずれも2。2年後には三男が中学生になることもあり、ちょっとモヤモヤした気持ちが隠し切れなくなっています。ちなみに「土日のみ」と記載していますが、これは「土日いずれか」で実質的にクラブでの活動は週1回というケースが大半です。

クラブの目的は競技力向上ではない?

運動部に所属する理由はさまざまです(私は運動指導はなので、ここで文化部には触れずに置きます)。好きなスポーツがある人はもちろん、仲間を作りたい、運動不足になりたくない…など。もちろん、学校によっては原則として部活動参加を義務付けているところがあるかもしれません。ですから、「強くなりたい」という気持ちの度合いだって人によって違うのは当然でしょう。

しかし、以前相談を受けた自治体(正確には委託を受けた事業者)の話を聞いて、意味不明だなと思ったことがありました。それが、指導するに当たってのクラブの目的です。私はプロとして指導に携わっていますし、そういう人間に依頼するのであれば、当然ながら競技力向上を目指すものと捉えていました。しかし、面談時に聞いたのは以下のような内容です。

「あくまで、練習に打ち込んで競技力を高めるというより、学外で運動を楽しんでもらおうという位置づけになります。」

全員の熱量に合わせることは難しいですが、クラブには競技力を高めたいと望む選手も入るでしょう。それなら、特定競技のクラブではない運動をベースにみんなで遊ぶサークルみたいなものを別に作って、競技思考でない人はそちらに参加させたら良いのでは?…そんなことが頭に浮かびました。

もちろん、“楽しむ”という気持ちは非常に大切です。しかし、私は競技指導するのであれば、やはり「強くなりたい」という意欲を持った選手を育ててあげたい。ですから、これまで残念ながらすべてのご相談は実現に至っていません。

土日だけクラブの問題点

先に分類した形式のうち、「2.平日は学校(これまで通り)で土日のみクラブで活動」には非常にたくさんの問題点があると思います。

平日の練習内容

土日(のうちいずれか1日)で指導したとして、平日にどんな練習を行うのかは管轄が学校になります。もちろん練習メニューを提供し、それに沿って取り組むよう伝えることはできるでしょう。しかし、本当にその通り行ってくれるかは分かりません。

実際、私が外部指導員として週2~3日で中学陸上部を教えていたときのこと。なかなかドリル等の基本スキルが定着しないので選手に質問したところ、「平日はドリルなど行っていません」と回答されて驚いたことがありました。特にスキルトレーニングは反復が重要。これでは、こちらが想定した通りに競技力を伸ばしてあげることはできません。何度か学校側に徹底を促しましたが、変わりませんでした(その理由等はここでは省きます)。

選手たちに大きなポテンシャルがあるにもかかわらず、それを最大限に引き出してあげることができない。指導者として、これほどもどかしいことはありません。

選手との信頼関係

本気で強くなりたいと思っていればこそ、私は指導者と選手との間に強い信頼関係が欠かせないと考えています。しかし、週1回で強い信頼関係を構築するのは、非常に困難なことです。まして、前述のような原因で思うような成果が出せなかったら、「この指導者ではダメなんだ」と捉えられても仕方ありません。たとえ信頼関係ができたとして、時間がかかるほど成長のチャンスは失われてしまいます。

できるだけ多くの時間を共有し、コミュニケーションの中で指導と練習を行い、その先に成果を出すこと。信頼関係の構築に欠かせないフローですが、週1日のみでは難しいでしょう。以前に外部指導員だった頃は、生徒とLINE等を用いた個別のコミュニケーションも禁止されていました。これが改善されているのなら、あるいは多少ですが変わってくるかもしれません。

クラブ側の負担と報酬

地域移行後、大会はクラブチーム単位で参加になります。当日の引率はもちろん、大会運営にも多少なりスタッフ等で携わることになるでしょう。もちろん、そうした負担が大きいからこそ、地域移行という手段になったのだと思います。ただ、週1日しか指導しないのに、もっとも負担の大きな部分も担えというのは…どうでしょう?

もちろん、クラブ側には報酬が支払われます。自治体によって金額が異なるので具体的には挙げませんが、これが正直に言って安い。ほぼ、通常のアルバイトに少し色がついた程度(夜勤パートより低いかも)です。しかも、現場業務以外はまったく考慮されていません。大会出場に伴う手続き、関係者(学校、ご家庭等)とのやり取り、練習メニューの作成など…。これでは、負担と報酬のバランスがまったく取れていません。

指導者の質

土日のみ指導とするのには、指導者の確保も背景にあるのかなとは感じています。同じ地域でも学校は広い範囲にありますし、移動を考えるとクラブも複数設けなければいけません。それだけ指導者の数も必要ですが、平日は働いている方が多いため確保が難しでしょう。そこで、土日だけなら指導者を集めやすくなります。

しかし、数が確保できたとして、質はどうでしょうか。恐らく集まった人の多くは競技経験者でしょうが、指導経験者は少ないはずです。では、競技経験があれば指導できるのか。過去に自分が行ったことをそのまま”やらせる”ことはできても、それでは指導になりません。競技において、指導者との出会いはその後の成長を大きく左右するもの。質という意味で、残念なクラブが増えてしまう懸念は拭えません。それも考えて「競技力を高めるより楽しんでもらう位置づけ」なのかもしれないのですが、本気で強くなりたい競技者にとって、それは本当に良いことなのでしょうか。

部活動自体なくてもよくない?

色々と書いてきましたが、それならいっそ、部活動というもの自体を廃止したら良いのではないでしょうか。クラブは作るけど、あくまで任意で競技したい人だけ。平日土日とも、その競技に打ち込みたい人だけ参加する。費用(あるいは送迎など)はご家庭の負担になりますが、親として子どもが本気で「やりたい!」という熱意を持っているなら、そこは検討の範疇になることでしょう。自治体が出す想定になっている報酬分を補助に回したり、活動場所に学校施設を開放して各学校を経由する送迎バスを運行したりしてくれたら、負担は大きく削減できます。

各競技で複数クラブがあれば、指導方針等に応じて選手たちが所属先を選ぶこともできる。教員の負担はちゃんと軽減されますし、一番の解決策と思っています。もちろん実現するには検討・調整すべき課題が出てくるのでしょうが、今のように中途半端な地域移行で進めるより、誰にとってもメリットがある気がするのですがいかがでしょうか。少なくとも競技者、競技者の親、指導者という3つの視点を持つ身からすると、そちらの方が個人的にはありがたいと感じてしまいます。

一番は競技する伸び盛りな子どもたち。彼・彼女たちの成長において、もっとも最適な環境が整備されることを願うばかりです。

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