いいでしょ?僕の人生

ライターを取り巻く課題と求められるスキル


ナレッジ・リンクスで最もご依頼が多いのが、ライティングのお仕事です。当社では紙からWebまで幅広い媒体で対応しておりますが、中でもWeb媒体はライティングのご依頼が増加傾向にあります。

■Web媒体のライティング・ニーズ

Web媒体の中でも、以前はSEO対策用のいわゆる“量産系”記事が多く見られました。しかし最近は、少し方針が異なってきています。具体的には“読まれる”ことをしっかりと意識したコンテンツ作りが多くなっており、コラムをはじめ定期更新を必要とするご依頼が少なくありません。

記事数の多いご依頼でも、これまでのように「とにかくキーワードの含まれた記事があれば良い」のではなく、クオリティについても高いものが求められるようになってきたようです。恐らく、これはSEO対策に必要なコンテンツ作りの変化によるものなのでしょう。Googleがオーサーランクを評価するといった噂も出ていますから、これからもWeb媒体におけるライティングは、大きく変化していきそうです。

このようにWeb媒体でのライティング・ニーズが増え、その内容も多様化する中で、もう1つ変化しているものがあります。それは、仕事の“発注経路です。

■発注経路の変化

これまで紙媒体が主流だった頃は、出版社や編集プロダクション、あるいはその他制作会社などと契約を結び、依頼を受けてきたライターが多かったでしょう。今現在もこの形態はなくなっていませんが、その関係が薄れつつあることを感じている人は少なくないはずです。

では、どのように変わっているのか?

恐らく多くの方がお察しの通り、インターネットを介した発注が多くを占めるようになっています。クラウドソーシングの成長は、その最たるものといえるでしょう。その他にライター募集サイトもありますし、当社でもパートナー様との主な連絡手段はメールなどのオンラインツールです。

インターネット上では、まさに世界中が繋がっています。仕事の受発注においても、場所を選ばず“世界中の優秀なフリーライター”を探すことが可能といえるでしょう。
また、発注も簡単です。仕事情報をまとめてWeb上にアップすれば、その仕事を希望するフリーライターから連絡が入る。あとはお互いに疑問など解消し、同意すればすぐに仕事が開始されます。クラウドソーシングなどであれば、納品から支払まですべてオンラインで完了するのです。

こうしたメリットから、最近は実に多くの企業が、インターネットを利用したフリーライターへの仕事依頼に乗り出しています。しかし私は、ここに2つ大きな課題が生まれているように感じています。

■フリーランスを知らない発注者

私はフリーライターとしても活動しておりますので、実際にインターネット上だけのやり取りでお仕事を行ったこともあります。会社としても、メールベースでご発注を頂くということが最近は増えています。その中で感じる、2つの課題。それは、

  1. 発注者がフリーランスという働き方を知らない
  2. 発注者が発注の仕方を知らない

ということです。

1)発注者がフリーランスという働き方を知らない

同じ“業務の受発注”でも、会社間取引とフリーランスとの取引では、そこに大きな違いがあります。一部ではありますが、ザックリとその違いをまとめてみましょう。

  • 定時が決まっていない
  • 休日が決まっていない
  • 固定した勤務先(=仕事場)がない
  • 常に連絡がつくわけではない(電話窓口もなく、不在時に伝言もできない)
  • プロ意識の高い方が多い
  • ほとんどは自分1人分のリソースしか持っていない
  • 自分自身の力で稼いでいる

こうした違いは、残念ながら実際にフリーランスとして働いてみないと、理解できないものがほとんどでしょう。表面的に理解した気になっていても、やはり難しいと思います。

そしてこのことは、仕事を受発注する際に大きな影響を与えます。いくつか例を挙げてみましょう。

<スケジュール>
事前にしっかり決まったスケジュールで発注を行えば、フリーライターは自分の予定を参照して対応可否を判断できるでしょう。
しかしこれが未定の場合、スケジュールが決まるまで安易に仕事を受けることはできません。自分以外にリソースがありませんから、たとえ今現在なら余裕で引き受けられる仕事でも、明日には状況が変わって受けられなくなるかもしれないのです。とはいえ、フリーライターは働かなければ収入も得られませんので、いつまでも未定案件のためにリソースを空けておくことはできないでしょう。これは、事後のスケジュール変更などでも同様です。

<土日の作業>
よく、「フリーライターは土日も仕事をしている」と考えている人がいます。納期などを見ると、明らかに作業期間に土日を含めているのです。
もちろんフリーライターの中には、土日でも仕事をしている方が多いでしょう。企業が休みで電話なども入らないので、むしろ集中して仕事ができる時間だと捉えている人もいます。しかし、全員がそうではありません。例えば私なら、土日のほとんどはマラソンレースに出場しているか、家族との時間に使っています。土日に仕事をするということは、非常に少ないケースです。

<レスポンス>
フリーライターの多くは、決まった定休や営業時間を持っていない方がほとんどでしょう。これに対し、発注する側の企業では、逆に営業日・定時が決まっている場合が多くなっています。
さらにフリーライターは1人で仕事をしています。例えば打合せに入っている際、電話への応答やメール返信はできません。仕事の合間を見て、平日に遊びに出かけることもあるでしょう。こうした時間や場所の自由は、フリーランスだからこそ得られる特権の1つといえます。
しかし中には、「なぜ電話に出ないんだ?」「メールの返信が遅い」などと言う企業もあるのが実態。つまり、発注側が自分たちの勤務体系をベースに考え、フリーライターの働き方に理解を持てていないのです。もちろん、ライター側もビジネス上で良い関係を作ろうと思えば、ある程度相手に寄り添った対応は必要でしょう。しかし、時間を自由に使いたいと考えているフリーライターにとって、こうした事態は出来る限り避けたいと考えるはずです。

2)発注者が発注の仕方を知らない

インターネット上での業務発注は、その手軽さが大きなポイントといえます。しかしその手軽さが、発注業務の“質”を下げてしまっているのではと、最近特に感じています。その理由は、これまで業務の外注経験を持たない企業が、一気にフリーライターへの発注に乗り出したからです。

一見すれば、フリーライターにとって仕事が増え、嬉しいことのように思えるかもしれません。しかしこのことで起きているのが、『受注後のトラブル』なのです。よく聞かれるトラブルを、いくつかご紹介しましょう。次のようなことが、受注後に起きています。

  • 仕様変更による書き直し
  • 納期の前倒し
  • 作業工数の増加
  • 要望の追加(クオリティアップ)
  • 報酬減額の交渉 など

中には何度も修正を求められた挙句、「これでは成果物として承認できない」とされ、報酬が支払われないケースもあります。もちろん、ライター側のクオリティに問題がある場合もゼロではありません。しかしその原因の多くは、私の知る限り発注側が必要な情報を伝えきれておらず、後になって次々と「あれもこれも」と情報が出てくることにあるようです。

そもそも、こうした事態は下請法によって禁止されています。法律では資本金など法律適用に諸条件がありますが、行為そのものが本来は「起きるべきでないもの」とされているからこそ、こうした法律が定められているといえるでしょう(中には、この法律の存在すら知らない人がいるかもしれませんが…)。

発注後にこうした事態を起こさないために、どういった発注を行えば良いのか。その発注方法を知らない発注者が、今世の中に数多くあります。
サッカーにルールを知らず出場すれば、反則を起こしたり、周囲のプレイヤーに迷惑をかけたりするでしょう。試合であれば、そのことが原因で負けてしまうかもしれません。仕事においても、お互いが良い関係下において高いパフォーマンスを発揮するためには、最低限“知っておく”必要のある知識・情報があると思うのです。