いいでしょ?僕の人生

コンテンツライティングの抱える課題


Welq問題で、WEBライティング界隈がザワついています。本件については多方面で取り上げられているので、気になる方はどうぞググッてみてください。これに伴ってWelqのみならず『DeNAパレット』本体サイトを含む関連メディアは、そこに含む全記事の非公開を決定。この対応そのものは、個人的に迅速かつ適切な対応だと思っています。

この件はDeNAという大手企業が大元ということで、かなり大事件として取り上げられました。まだ完全鎮火されたわけではありませんが、単純にWelqあるいはDeNAだけに留まるものではありません。これまでも、あるいは現在でも類似した“コピペ記事”は作成されているし、それこそ探せば驚くほどのメディアが浮上してくるのではないでしょうか

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あるいはWEBライティングという仕事そのものについても、私としては大いに考えさせられます。実際、記事制作に用いられたとされるクラウドソーシングサービスにも話題は飛び火している状況。1人のライター、そしてクラウドソーシングを初期から利用してきた身としては、これを機会として軌道修正されていくことを願うばかりです。

■クラウドソーシングだけじゃないんだよ?

ちなみに私、Welqについてはちょこっと関わりがありまして…。と言っても、某社経由でWelq掲載用の原稿執筆を依頼され、1本だけ納品したわけです。それは、クラウドソーシングではありません。編プロ的な立場でライターのディレクション・管理を行い、企業へと制作物を納品する会社です。まぁ、私が経営しているナレッジ・リンクスと競合とも言えるのですが、

「スポーツを軸とした健康管理に関する専門コラムを執筆してほしい」

という依頼で引き受けました。単価は低かったのですが、交渉してとりあえず許容できる範囲まで引き上げ。新規メディアということで私も“お試し”みたいな感覚があったのを覚えています。

結果、自分自身の経験・知見をベースとしたコラム原稿を納品したのですが、Welqには残念(?)ながら掲載されずに終わっています。そしてこのコラムについて制作費の支払いが滞り、これは結果的に「1本文の原稿で深追いするのは無駄」と判断。2〜3回の督促メールを送ったところで捨て置いています。ちなみに相手方は現在も普通に営業していて、名前を聞けば多くの方は分かる程度の規模を持つ企業です。

ということで、クラウドソーシングは恐らく制作数が膨大なのでスポットを浴びてしまっているのですが、それ以外にもいろんな闇があるわけです。私の件にして思えば、

「まぁ、あの企業が発注窓口をやってた案件だもんな」

と納得してしまう流れだったかなと。なのでオンライン完結、そして大量の(自称)ライターを抱えるクラウドソーシングだから云々ではなく、総じてコンテンツライティングを受ける側・依頼する側の全体に問題があるのだと思います

※ちなみに自社を擁護するわけではありませんが、ナレッジ・リンクスはそもそもこうした低単価案件を扱っていません。加えて入れば、要件が曖昧なものはどれだけ“おいしい”仕事でもお断りします。そういうのは「自分たちで書いてくれる人見つけて勝手にやってくれ」という主義なので。あくまでプロとして活躍したいライター、そしてその価値を理解し求めてくださる企業とを引き合わせることに注力しています。

私はライターでありディレクターであり、そして法人においては発注者でもあります。これまで数多くの企業・ライターと関わってきました。だからこそ感じる課題点について、いろんな立ち位置からちょっと考えてみます。小難しくなりそうなので、簡潔に…

■ライターの立場から見た課題

そもそもライターという仕事は、現在、とても微妙な感じになっています。なぜなら「私はライターです」と言えば、誰でもライターになってしまうから(そろそろ、呼び方とかで分けたいですね…)。そのため、ライターとしての意識や知識レベルが低いまま、ライティングという仕事を引き受けてしまっていることが多々見られます。これは著作権云々を含めた話で、実のところ非常に大切な問題です。

  • 知識がないから「危うい仕事」も受けてしまう
  • 「なんとなくできる気がする」で仕事を引き受けてしまう
  • 本人が知らないうちに著作権違反などを犯してしまう
  • スキル不要の案件でも数多く対応していると「自分はプロだ」と勘違いしてしまう

といった状況は、まさにこうした背景から頻繁に起きているのではないでしょうか。そもそもWelq問題に関しても、ライター側のリテラシーにだって原因の一部があると思うのです。

アクセルとブレーキの位置を知らずに車に乗れば事故を起こすのと同じ。ライターがライターとして最低限でも保持すべき意識・知識を持たずして仕事に取り組めば、こうした事態を招くのは当然ではないでしょうか。これを「プラットフォーム側でちゃんと精査できていない」と叩くのは簡単ですが、そもそもライターを名乗る人それぞれに問題があると思うのです。

  • ライターの持つ“本当の”スキルや知識レベルが分からない
  • 安易にライターと名乗る人が多過ぎる
  • ライターにプロであるための努力が足りない

あたりは、今回浮き彫りになったライター側の課題ではないでしょうか。自戒も込めて。

■ディレクションの立場から見た課題

現在ライターとして仕事に取り組む人の多くは、「ライティング業務のみに特化」していることでしょう。つまり企業からのヒアリングや要件調整などは行わず、固まった要件に沿って“記事を書く”ことだけを担当します。これは、別に悪いことではありません。目指すべきライター像は異なり、働き方は人それぞれ違って当然ですから。

そうなると、エンドクライアントとの間にディレクションを行うディレクターの存在が欠かせません。フリーランスのディレクターも多少いますが、現状では、その多くを制作会社やマーケティング会社などが担っていることでしょう。これはコンテンツライティングという仕事が、サイト制作やWebマーケティングの延長的な位置付けで扱われていることに起因します。

  1. 営業・ヒアリングを行う
  2. 交渉を経て要件を決定する
  3. ライターをアサインする
  4. ライターが記事を作成する
  5. 作成された記事をチェックして納品する
  6. メディア等に記事が掲載される

ざっくり書けば、このような流れでコンテンツ制作が進みます。中にはチェックを省いて掲載に進めてしまうような危ない事例もあるのですが…ここでは触れずにおきましょう。

私は法人として複数名のライターと委託契約を結び、さまざまな記事を発注しています。そこでは作成依頼や進捗管理、納品物のチェックなどが伴い、エンドクライアントから直接依頼を受けない限り、ディレクションは本来であれば管轄外です。しかし実際のところ、多くの案件でディレクションの一部を担っています。

制作会社やマーケティング会社には、基本的にディレクターが存在します。そしてこちらに依頼あるいは相談が届く段階では、もちろん要件に関するエンドクライアントからのヒアリングが完了しているわけです。それならば、本来はそのままライティング業務に進めるはず。しかし残念ながらそうはいきません。結論から言えば、記事を作成するうえで確認すべき事項がかなり抜けているのです。

私は恐らく、業界内でもかなり細かく事前に要件を詰めています。というか、しっかり詰まっていないと引き受けません。しかしそれは、後になってトラブルが起きるのを避けるため。つまり、エンドクライアントに対してよりイメージに近い記事を納品すると共に、修正を含む追加作業、あるいはそれに伴うやりとりをなくすことが目的です。だからこそ「事前仕様外の修正は応じません」というスタンスでいるのですが、お陰さまでかなりトラブルは減りました。

もちろん誰もが「できるだけスムーズな進行を」と考えていることでしょう。しかし実際にできないのは、ディレクター側に“ライターの目線がない”からだと感じます。つまり、何を聞くべきかが分からないということ。これは、どれだけディレクションという仕事でライティング案件に関わってきても、実際のライティング業務の経験がなければ埋め切れない気がしています。つまりライターの目がないということが、ディレクションにおける課題だということ。こればかりは、ライターとしての経験値(そしてどこまでコンテンツ制作に関わってきたか)がポイントとなるのでしょう。一朝一夕で身につくものではないと思います。

余談ですが・・・こうした背景から、私は1つ考えていることがあります。それはクラウドソーシング利用を含め、フリーランスへライティング発注する際のディレクション(ライター管理も含む)について、フリーディレクターとして活動してみようかということ。紙からWEBまで、ライター/エディターとして働き11年強。MAX100名以上のライターとパートナーシップを持って各種案件に対応してきた経験は、コンテンツライティングの明るい未来を作るべく活かせるのではという考えです。具体的な動きは決まっていませんが、例えばメールや電話でサポートには入り、営業の持ち帰った案件について「発注前に確認すべき事項」を指摘・アドバイスするなど。場合によってはヒアリングに同行しつつ、ディレクターの要請に関わるのも良いかもしれません。もしご興味のある企業があれば、お気軽にご相談ください。何も決まっていないからこそ、いろいろ柔軟な関わり方でサポートできるかもしれません。

■発注者の立場から見た課題

最後に、発注者側からの課題についても考えておきます。といっても、これはやはり『リテラシーが低い』ことに尽きるのではないでしょうか。直接ライターに依頼するにせよ、どこかの企業を仲介するにせよ同じ。フリーランスに発注するということについて、まだまだ理解が不足しているように思えます。

また前述の通り、ディレクターがスキル不足であることも忘れてはいけません。ディレクターを信じ切って何もかも任せていては、イメージ通りの納品物は得られないでしょう。もちろん“当たり”のディレクターに出会えれば別ですが・・・かなり確率は低いと言えます。

ですから発注する側もまた、「本当にこれでイメージする納品物が得られるのか」を考えなければいけません。ただ、これがバッチリできるようになれば、コンテンツライティング自体について仲介会社を挟む必要はなくなってしまうのですが。制作・マーケティング等とは切り離し、ライティングは自社で対応できる体制を構築するのも1つの道かもしれません。

■価値あるコンテンツ作り

もちろんWelqに関しては、コピペ等に関する著作権周りの話、あるいは専門性などについても問題がありました。その辺は各方面でいろいろ叫ばれていますので、ここでは避けておきます。とりあえず一度、ちゃんと著作権等について学びなおしましょう。

コンテンツの質は、『ライティングクオリティ』と『専門性』とが合わさってこそ高まるものだと考えています。だから私はプロとして自己研鑽を続けるし、会社ではライター以外にさまざまな資格・経験を持つ専門家ともパートナーシップを構築してきました。調べてみると似たような情報が見つかる・・・ではなく、そこにしかない情報を。インターネット検索すれば膨大に情報を得られれう現在だからこそ、その観点がとても重要なのではないでしょうか。それこそまさにオリジナルのコンテンツが求められます。

コンテンツの価値を決めるのは、それを読む人々です。つまりユーザーが何を求めていて、そのコンテンツを見たときに何を感じるのか。コンテンツライティングは、その在り方について見直すべきターニングポイントにあるのかもしれません。