いいでしょ?僕の人生

スポーツライターとして私が“体験取材”を強く勧めるワケ


私はスポーツイベントや大会等を取材する場合、よく体験型のレポートをお勧めします。分かりやすい例で言えば、マラソン大会で“出走取材”でしょうか。これはその名の通り、実際に自らの脚で大会を走り、撮影写真と共にその様子などを記事化する仕事。大会側としては宣伝になりますので、中には取材枠を設けて走らせて下さるケースも少なくありません。

しかしこうしたレポート、利益を求めるメディアだと容易に扱ってもらえるものではありません。なぜならアクセス数が増えるのは、基本的に以下2つのタイミングに限られるからです。

  • 募集時期
  • 開催直前

また、読み手となる各レースの出場者数も懸念点。例えば東京マラソンですら、出場者は3.5万人程度です。もちろん全員が読むわけではないので、爆発力という意味では弱いでしょう。

それに対して、当然ながら取材・執筆にはコストが発生します。本・雑誌と違って記事そのものが購入されるわけではなく、あくまで広告等が主収入であるWEBメディア。それ故、このコストにはシビアなのです。多くのメディアでは、どうしても

「早い段階で多くのアクセスを稼げる記事」

が歓迎されます。“バズ記事”なんて言葉は、その最たる例ではないでしょうか。

しかし長い目で見れば、そのコンテンツはイベント・大会等が存続する限り毎年アクセスが得られます。毎年、変更だけチェック&アップデートすればなお良いでしょう。つまり長期的に見ると、瞬間的に爆発力を生み出す記事以上の効果が期待できるかもしれないのです。

例えば先日開催された『柴又100K』。レース中、驚くほど多くの方々から「ブログ見ました!」と声を掛けられました。最初は何のことやら分からず御礼だけ伝えていたのですが、後から確認してビックリ。昨年書いた大会走破に向けたブログ記事が、ここ数日で驚くほどたくさんの方々に読まれていたのです。よく見てみると、他の出走レポなども同じような現象が起きていました。数年前のレポートでも、大会前になるといきなりアクセス数が急増しています。

つまり「どんなイベント・大会なのか」「どうすればより楽しめる(マラソンなら完走やPB更新)のか」という情報は、それだけユーザー価値という面では“求められている”ということ。そしてコンテンツの価値は、そのままメディアの価値に繋がるものだと思うのです。だからこそ私は、メディアや大会運営者にそういったコンテンツ制作を強く提案しています。

しかし周囲の方々、あるいはメディアの担当者からは、よく次のように聞かれることが少なくありません。

「別に体験しなくても、外から見れば書けるんじゃない?」

確かにイベント・大会の全容は、外から見ただけでも書けるでしょう。さらに参加者へ取材すれば、だいたいイメージできます。実際にスポーツ系の取材では、外から撮影し、その様子をまとめたような記事が大半を占めています。しかし“本当の実態”は、やはり実際に体験しなければ分かりません。そしてその実態に基づいた情報こそ、大きな価値を持つものだと考えています。

表面的な情報ではなく、また、個人的な感想でもない。自らが体験して感じた情報を、冷静かつ客観的に記事として書いていくことこそ、読み手がその風景を具体的にイメージできるはず。これはメディアのみならず、大会・イベントの運営側にもお勧めしています。なぜなら、レポートの配信によって、新たなエントリー者の獲得に繋がるから。あるいは参加者にとってレポートが“振り返り”となり、リピーター化も期待できるでしょう。その理由は、レポートを通じて本当の良さ・楽しさが伝わり、「自分も参加してみたい」とワクワクしてくるからです。

例えばマラソン大会なら、私は「100kmまでは完走必須で取材できます」と断言しています。それ以上の場合、DNF地点までのレポートで後に繋げるか、もしくはDNF後に車などで外から取材するか。子供向けイベントや教室などは、自分の子供を連れていき、親目線から取材するようにしています。情報過多となっている今の世の中だからこそ、コンテンツの価値について本質的な部分から考えたい。体験レポートは、私なりにスポーツ経験から導き出した1つの提案です。