いいでしょ?僕の人生

台風19号を経て考える“今後への備え”について


河川氾濫など各地に大きな爪痕を残して、台風19号が過ぎ去りました。多くの皆さまは、不安な1日を過ごされたことでしょう。今もなお救助・普及が行われているほか、避難所での生活を余儀なくされている方も少なくありません。少しでも早く、皆さまに日常が戻ることを願っております。

台風15号から続いた大型台風の上陸は、果たして偶然なのでしょうか。私は、そう考えていません。詳しいことは専門外ですが、なんとなく「温暖化を含めた環境変化によって、こうした災害が起こりやすくなっているのでは…」と考えています。ですから今後も同程度、あるいはそれ以上の事態が起こるものとして、備えておく必要があるのではないかと思うのです。

備えと言っても、単純に非常食や災害グッズを自宅に常備しておくというだけではなく。生活拠点や働き方を見直したり、家族間で緊急時の行動について共通認識を徹底しておいたり。色んなことが対策になると思います。

再度となりますが、私は別に災害対策に関する専門家ではありません。ただの杞憂に終わり、大きな災害など起きることなく月日が過ぎ去っていく可能性もあるでしょう。しかし「備えあれば患いなし」というように、備えておいて何もなければ「良かったね」で終わり。が、備えず万が一を迎えれば取り返しのつかないことになりかねません。これを機会として、自分もしくは周囲の命を守るための備えについて見直してみてはいかがでしょうか。あくまで個人的なものですが、少し私なりの考えをいくつか綴っておきます。

■命を守るために住む場所を選ぶ

私は2年半前、東京都葛飾区から千葉県印西市へと引っ越しました。その際、場所選びで重視したのが「災害時の安全性」です。特に実家のある宮城県(あるいは東北地方)が東日本大震災による被害を受けた背景から、地盤はもちろんのこと、重視したのが「水害リスク」。とても簡単な言い方になりますが、「もっとも恐れるべきは水害」と考えました。それは東日本大震災の津波だけでなく、その後の西日本豪雨でも痛感したこと。そして今回の台風19号でも、河川氾濫等による水害が大きな被害を与えています。

次いで「土砂災害」も危険が高く、そのため頭の中には“海や川、山の少ない場所”という選択が自然と浮かびました。地形を調べ、ハザードマップを確認。結果的にはランニングで訪れたという偶然から決めた千葉県印西市ですが、調べた限りではとても災害に強い地域だと思います。

また、以前は戸建てに住んでいましたが、現在はマンションです。これは敢えて選んだわけではありませんが、結果的に良かったと感じています。例えば実家は戸建てですが、坂の途中に位置しているほか、1階部分が高くなっています。しかしこうした立地・構造でなければ、やはり戸建てには浸水リスクが伴うでしょう。そういう視点では、「マンションは安全性が高いのでは…」と感じました。

ただし、あまりに高層階だと停電でエレベーターが止まった場合、外に出る(例えば水などを運ぶ際)のが困難になるでしょう。私は「その時は良いトレーニングになる」と割り切っていますが、5~6階くらいが適切かもしれません。また、いくらマンションでも、低層階では戸建てと同様に浸水リスクが高くなります。ただし高層階の場合、強風による飛来物が窓ガラスに直撃…といった可能性は低いので、その辺りは検討が必要です。

とはいえ、古い建物は耐震性・耐久性が心配です。これは、戸建てもマンションも同様でしょう。屋根が吹き飛んだり、外壁部が崩れたり、揺れで崩れたり。どうしても築年数が古ければ、それだけ構造が脆く、また経年劣化による機能低下も考えられます。マンションであれば管理費を支払い、定期的なメンテナンスが行われるかもしれません。それでも土台は同じなので、やはり新築に比べれば機能は劣ります。常に新しい家へ住み続ける…というのは、金銭面などから難しいでしょう。それでも引っ越しなどの際、できるだけ構造がしっかりした住居を選択することはできます。また、戸建て購入なら建売ではなく、万が一に備えた住居を自ら(専門家に相談しつつ)作り上げることも可能です。暮らしやすさだけでなく、防災の視点から設計してみるのも良いのではないでしょうか。

ちなみに私は引っ越しの際、持ち家を売却しました。持ち家の購入と言えば、多くの方々にとって人生最大の買い物と呼べるものの一つ。もちろん、私にとっても同様です。しかし別に家を購入したからといって、そこに住み続けなければいけないなんていうことはありません。タイミングによっては、購入時より高い(あるいは出来る限り購入額に近い)金額で売却できる可能性もあります。もし現在の住居に不安を感じたのであれば、引っ越しも検討してみると良いかもしれません。

■いつでも動けるよう身軽になる

万が一の際に引っ越したり、一時的に非難したり。“身軽に動ける”ことはとても大切だと思います。それは、別に「家を買うより賃貸にしておけ」ということではありません。確かに購入した家を売却するのには、それなりに手間と時間がかかるので賃貸の方が身軽です。でも、持ち家にもメリットはありますから、例えば気持ちとして“売る”という選択肢を持っておくだけでも良いでしょう。愛着のある場所、まして自ら購入した家を手放すのは寂しいもの。しかし命と比べれば些細な事です。まずは、気持ちから身軽になっておくと良いと思います。

また、私は別にミニマリストというわけではありませんが、やはり余計なモノは排除しておくべきかもしれません。たとえモノに溢れていても、本質的に大切なモノをあらかじめ絞り込んでおく。一度、最悪のケースを考えて、「必ず持って行くべきもの」を必要最低限で整理してみてはいかがでしょうか。

また、例えば仕事用のパソコンをデスクトップから持ち運べるノートPCに変えるなど、必須品こそ“持ち運べる”状態にしておくと良さそうです。データもクラウドに保管して、どこからでもアクセスできるように。お金は電子決済を使いこなせるようにして、現金が手元になくても生活できるようにしておくなど。いざというとき迅速に動けるよう、身軽な状態を作っておきたいと思います。特に私のようなフリーランスは、どんな事態であれ働けなくなることが死活問題となるでしょう。ですから、“どこにいてもある程度は稼げる”環境を持っておくことは非常に重要です。

私の場合、仕事するうえで必要な最低限のモノは「ノートPC」「電源」「Wi-Fi」だけで、このうち持ち運びが必要なのはノートPCだけ。ガソリンが確保できる状態で車に乗っていれば、車から電源を取りつつノートパソコンで仕事ができます。ガソリンは日頃から半分以下にならないよう注意しているので、万が一の事態が起きれば、ガソリンが確保できる場所まで移動して車生活すれば良いわけです。インターネットは公衆無線LANを探すか、テザリングである程度は問題ありません。最近は若者を中心として乗らない人が増えているという車も、私のように大家族となれば、身軽に動くために便利な手段となっています。

■働き方を見直して、もっと自由になる

皆さんは、いつから台風対策に動き出したでしょうか。私の住んでいる地域では上陸直前、ガソリンスタンドは完売閉鎖が増え、スーパーからは水やパン類などが消えていました。特に今回は週末の台風ということで、金曜から土曜午前にかけて、ガソリンスタンドやスーパー等は大混雑だったようです。

私自身は1週間ほど前から水や食料、電源等を確保。ガソリンも満タンにして、金曜から自宅に引きこもり状態でした。平日日中に買い物へ出かけ、水はコストコ、野菜や果物は直売所へ。その他にスーパーで買ったものもありますが、混雑なく“いつも通り”の買い物でした。金曜夜は皆でお風呂に入ってから、浴槽をキレイに洗って水を張る。家にあるモバイルバッテリーや充電池を満タンにして、タブレット類も充電。あとはテレビやネットで状況を確認しながら、いつでも対応できるよう備えて過ごすだけ…です。

余裕を持って準備できたので、台風の怖さはあるものの「準備万全」と落ち着いていられたと思います。水や食料、その他の物資も、多くの方々が我先にと奪い合うような状態には遭遇せず、焦りやストレスとは無縁で確保。これは、やはり曜日・時間を問わず自由に動ける身だからこそでしょう。

ちなみに、引き籠っている間も普通に仕事していました。実際には停電の可能性を考え、「仕事は雨風が強まる前まで」と午前中に。私は外部のフリーランスに仕事を依頼していますが、同じように台風など関係なく納品してくれる方も少なくありません。万が一を考えて台風前後の納品物はすべて前倒しで対応しておきましたが、お陰様で納期遅滞など一切起きずに済みました。

これは、別にフリーランスという働き方を勧めているわけではありません。ここでは割愛しますが、フリーランスが必ずしも万人にとって最適な働き方とは思わないからです。しかし昨今は多くの企業で、柔軟な働き方を導入するケースが増えています。在宅勤務を受け入れたり、残業ゼロを徹底していたり。私の知人にも「月数回は在宅勤務日がある」「有給休暇は直前でも取得できる」と言った方がいます。また、いざ台風上陸となったタイミングでも、台風15・19号ともに色んな対応が見られました。例えばあらかじめ上陸の良そうされる日を休業として社員を自宅待機させる企業がある一方、あらゆる手段を用いて出社を求める企業もある。同じ会社員でも、所属する企業によって働き方は大きく変わってくるものです。

いざというとき、自身の所属する企業がどのような対応を取るのか。また、自分は本当ならどのように過ごしたかったのか。台風15・19号を通じて、きっと考える部分のあった方は多いのではないでしょうか。もし今の働き方に疑問や不安を感じたのであれば、環境を変えるのも一つの選択肢かもしれません。もちろんその中に、フリーランスがあっても良いでしょう。仕事は人生の全てではありませんが、とはいえ、やはり重要な要素であることに変わりないでしょう。家族がいるならパートナーからも意見を聞きつつ、自身にとって最適な働き方を考えてみてください。それが結果的に、命を守ることに繋がるかもしれません。

ちなみに私は今の働き方で良かったと思う一方、あまり遠方出張の伴う仕事は増やしたくないな…と思いました。実は今回も、本当は高知県へ行く予定をキャンセルして自宅に残ったという経緯があります。いくら私でも、万が一のとき高知からすぐ走って戻ることは不可能です。この出張は自己判断で柔軟に調整できるので、すぐに「行かない(リスケする)」という判断ができました。しかしそうでない場合、クライアントから「なんとしても行け」と言われれば、断れないケースがある(それでも命の危険があれば断ると思います)かもしれません。どんな仕事を中心にしていくのか。自分自身で選択できる身だからこそ、この辺は少し見直していきたいと思っています。

■日頃から「災害が起きやすい国」という認識を

私はまだ35歳(今月で36歳)ですが、その短い間でも色んな災害が国内で起こりました。もちろん海外でも起きていますが、日本は台風や地震など起きやすい国と言えるでしょう。規模はさまざまですが、改めて「そういう国に住んでいるんだ」という認識を持つことが大切だと感じています。災害は他人事ではなく、いつ自分たちの身に起きても当然。そう考えられなければ、やはり「自分たちは大丈夫だろう」「前回は大丈夫だったし今回も問題ない」で終わってしまいます。その気持ちが備えを甘くしてしまい、いざというとき避けられたリスクを避けられず、大変な事態を招きかねません。

災害を常に我が身に起きうることとして考えておくこと。そして災害は、ときとして簡単に命を奪っていくということを、もっと真摯に受け止めるべきだと思います。冒頭でも書いた通り、備えておいて何もなければ「良かったね」で終わり。ですが、備えず万が一を迎えれば取り返しのつかないことになりかねないのです。命を大切に、少しでも人々の笑顔が失われないよう願い、私自身もまた取り組んでいきます。