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【ニュース】東京荒川マラソンの開催中止


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2014年12月21日(日)に東京都江戸川区の荒川河川敷で開催が予定されていた『東京・荒川マラソン』が、急遽中止となった。このことが、ランナーの間で大きな問題となっている。

私も過去にエントリーしていた大会が中止となったことがあるが、その際は台風で運営困難となったことが理由。天候は誰にも予測できないわけで、安全面からこれは仕方がないだろう。しかし同日、天候はまさにランニング日和。では、なぜ大会が中止になったのか?

「コースの利用申請が行われていなかった」

これが、主催者の回答である。私はこの大会にエントリーしていないが、ランナーとして強い怒りを感じている。この問題について、個人的な考察も含めながら少し考えてみたい。

■主催者の実態

大会ホームページを参照すると、主催者については「NPO団体 黎明」と掲載されている。NPOがマラソン大会を運営するケースは少なくないので、これは特に珍しいことではない。

私は大会運営に自治体が関わっていない場合、必ず主催者について調べるようにしている。疑っているというより、大会に向けた思いなどを知ることが出来るからだ。そこで今回も、この団体について調べてみた。するとこちらのサイトで、どうも正式なNPO団体ではなく“任意団体”である可能性が浮上してくるではないか。つまり、法人格を有する組織ではないのだ。それにもかかわらず団体名に“NPO”と掲げている辺りも、非常に胡散臭いではないか。

次に、住所について調べてみる。すると、ホームページに記載された住所は“バーチャルオフィス”であることが分かった。もちろんベンチャー企業などで、バーチャルオフィスが利用されるケースは多い。しかし多くの個人情報を扱うマラソン大会運営において、信頼という点ではやはり不安が残るだろう。

ちなみにテレビでもこの問題は報じられており、大会当日の様子も見られた。代表者が会場に赴いていたが、拠点は関西にあると話しながら、どうも特定のオフィスを持ってはいないようだ。迷彩柄のパーカーで現れるあたり、謝罪する姿勢として真摯とはいえない。

■大会運営の順序

私はマラソン大会を運営したことがないので、正しいことは分からない。しかし常識的に考えて、今回は大会運営の順序におかしな点がある。なぜなら、主催者は『コースの利用申請が行われていない(=大会が開催できるか分からない)』段階で参加募集を始めているのだ。つまり、実際に販売するか分からない製品を買ったのと同じ。しかもその時点で、利用申請中(実際には申請そのものがされていなかったが)である旨は掲載されていない。

「大会が開催されるかまだ未定ですが、予定しているので希望者はエントリーしてください」

こう書いていれば、問題は起きなかっただろう。もちろん全く問題ないとは言わないが、これで大会が開催できなくても、ちゃんと返金すれば「やっぱりダメだったか」で済むかもしれない。しかし今回は、正式な開催大会として募集がされている。

■返金で済む問題ではない

本件について、主催者は銀行振込等でエントリー費の返金を行うとしている。まぁ、主催者側の都合で中止となったのだから、これは当然といえるだろう。しかし返金すれば済むのかと言えば、残念ながらそうではない。例えば次のような方にとって、特に事態は深刻だろう。

  • 大会のために交通/宿泊費をかけて遠方から訪れた
  • 本大会に照準を合わせてトレーニングや調整を行ってきた
  • 本大会のためにエントリーを取りやめた大会がある
  • 大会参加のために仕事など休みを取った

もっと細かいことを言えば、大会の向けて前日カーボローディングしたり、接骨院などで治療を受けたり、あるいはランニンググッズを購入した方もいるかもしれない。そうしたランナーにとって、金銭・時間・精神面で怒りが起こるのは当たり前である。

主催者は今回の事態が起きた理由について、

「利用申請は他の者が対応しており、大丈夫だと聞いていた」

などと話している。しかし、これがそもそも組織として信頼できる体制ではない。申請しているのなら、組織として当然ながら申請書類の控えなど管理しているはずだろう。だからこそ巷では、この問題について詐欺と見る声も多いのだ。では「詐欺では?」と疑いの目を向けた相手に対して、自分の銀行口座を教えたいと思うだろうか。

大会エントリーでは、恐らく氏名や住所、メールアドレス、電話番号といった個人情報が主催者に届けられているだろう。そのうえ銀行口座まで教える…私には不安しか感じられない。

■中止告知のタイミングと方法

大会中止が告知されたのは、開催2日前(2014年12月19日)のこと。理由は先に述べた通りなのだが、コースの利用申請が出来ていないという事態を、そもそもこのタイミングまで知らなかったのだろうか。

いくら他の人が担当していたとはいえ、“任せきり”だったのであれば、組織としてあまりにお粗末だ。また、もしもっと早い段階から分かっていたなら判明した直後に告知するべきだし、もっと対応を検討できる時間もあっただろう。いずれにしても、告知が2日前というのはあまりに遅過ぎる。しかも一部報道によれば、『利用申請が出されていない』ことが判明したのは、エントリーしていたランナーが区に問い合わせたことが発端とのこと。それまで主催者が知らなかったというのなら、これもまた理解し難い事態である。

さらに今回、告知は一体どのようにして行われたのか。これも1つの問題だ。なぜなら、告知はホームページ上でのみ掲載されたというからだ。

ランナーのうち、一体どれだけの人が直前に大会ホームページを見るだろうか。まして出走を予定していたランナーによれば、開催1週間前に案内メールが届いていたとのこと。そこに詳細が書かれているのだから、ホームページなど見なくても不思議ではない。

また『開催1週間前に案内メールが届いていた』と書いたが、中止についてはメールが届いていない(少なくとも私の身近に「メールは届いていない」「Facebookで知った」という人がいる)点も疑問が残る。今回は事前に判明したことでメディア等でも騒がれたが、そうでなければ、知らない顔をして終わっていたのでは?そんな疑念が浮かんでも、仕方ないだろう。

■まとめ

今回の件については、まずちゃんと返金がされるのか否か。これが完了してからでなければ結論は出ない。しかし現状では大会運営者としてあまりに無責任であり、少なくとも大会運営に向けた真剣さは感じられない

本当に、ちゃんと大会を開催する気があったのか?

私には、大会運営を遊びのように考えているのではと思える。これは大会だけでなく、ランナーに対する侮辱とも取れるのではないだろうか。

とはいえ、流行に伴って多くの人々が集まるマラソン大会。今回の件が詐欺にしろそうではないにしろ、同様の事態はこれからも起こり得るだろう。そのため、まず大会にエントリーする際には、自治体や既知の団体によって運営されている大会を除き、必ず事前に運営者について調べることをおすすめする。少しでも怪しく感じれば、各所に確認を取ったり、場合によってはエントリーを控えたりといった対応が望ましいだろう。

また、今回の大会はエントリーサイトを通じて応募を受け付けたようだが、サイト側でも審査などを強化していく必要が出てきそうだ。例えばコース資料を含め、エントリー代行を行う上では厳しい規定(今回ならば、コース利用が確定していなければ承認しない 等)を設けるなど。今回の返金についても、例えばサイト経由での返金をとりまとめて行うなど、ぜひ返金が完了するよう出来る限りの対応を頂きたい。

年末という時期もあり、中には2014年のラストレースと考えていた人もいるだろう。中には初マラソン、あるいは記録更新を狙ってきた人がいるかもしれない。いずれにしても、誰もが楽しみに当日を待ち望んでいたことは間違いないはずだ。私にこの事態をどうこうできるわけではないが、まずは全員にエントリー費が問題なく返金され、少しでも皆様の怒りが収まることを願うばかりである。