日本テレビにアナウンサーとして内定していたという大学4年生の女性が、不当に内定を取り消されたとして訴訟を起こしました。11月14日に第1回口頭弁論が行われ、その中で日本テレビ側は、訴えに対し争う姿勢を見せているそうです。
なぜ、この女性は内定取り消しを受けたのか?
その理由は「ホステスとして銀座のクラブでアルバイトしていた経験がある」こと。昨年9月に日本テレビから内定通知を受けていたにも関わらず、このアルバイト経験を伝えたところ、今年5月に内定取り消しを受けたとのこと。
■内定取り消しは是か非か
私は法律家ではありませんので、結果は裁判所が出してくれるだろう。あくまで個人的な考えとしては、
「この内定取り消しは不当では?」
と思う。例えば犯罪を犯したり、病気・怪我などで就業不能になったり、あるいは、そもそも卒業が見送られたりといった理由ならば、内定取り消しもあり得るだろう。あるいは反社会的勢力に属する組織で働いたというのも、正当とされるのかもしれない。
では、ホステスのアルバイトはどうなのか?
日本テレビ側は「清廉性に欠ける」と言っているそうだが、これはホステスという仕事に対する偏見にも感じられる。単純にイメージの問題であり、アナウンサーとして仕事をする上で何の問題があるのか。一度は内定を出しているのだから、基本的に人物面や素質などについて「アナウンサーとして相応しい」と感じた人材なのだろう。アルバイト経験がホステス、特に今回は母親の知人からの紹介という経緯において、その1点のみで内定取り消しというのは疑問が残る。
例えば「過去一切のアルバイト経験を知らせること」と採用時に書面を交わし、同意の上で後から発覚したのであれば、これは虚偽による内定取り消しもやむを得ないだろう。「ホステスは採用しない」なんて要件に書くのも問題だから、懸念される点をすべて公開してもらい、そのうえで会社が採否を判断すれば良い…という考えだ。
■未来を奪っていないか?
たとえ訴えが認められたとして、一度このようにモメた環境で働けるのか。あるいは働いた場合、今度は社内で酷な扱いを受けてしまうのではないか。アナウンサーとして表に立った時、少なからず周囲から批判的な目が向けられてしまうのではないか。結果がどうなるにせよ、今回の件は大学4年生という若者の未来を奪ってしまう事案に感じる。
さらに、もし内定取り消しが認められたら?
今回は原告の氏名や内定取り消しの理由など、想像以上に多くの情報が公開されている。もし内定取り消しが正となれば、他でアナウンサーの仕事に就くことも難しいだろう。では他の仕事ならどうか?これも多少なり影響が出てしまうように思う。
まして今から就職活動を再開したとして、どれだけの企業が採用活動を行っているのか。もちろん数多くあるだろうが、時間とともに減っていくはずだ。しかもアナウンサーを目指していたにも関わらず、その仕事への道が閉ざされたら?
…「どんな仕事に就きたいか」から考え直し。そこに“働くこと”に対する希望を、果たして持てるのだろうか。
■おわりに
企業にとって、イメージはもちろん大切だろう。しかし人で成り立つ組織において、もう少し考えるべき点があるのではないか。どういう結末になるにせよ、この女性にとって明るい未来が訪れることを願いたい。
情報元:朝日新聞DIGITAL