会社員からフリーランスとして独立すると、いろんな変化が訪れます。今回は、その中でも大切な“お金”の話。SNS投稿やインターネット上の情報、あるいは対面等でフリーランスの方とお話していて、とても不安に感じます。
- お金だけがすべてじゃない
- お金より時間ややり甲斐が欲しい
といった考えは良く分かります。私自身も『お金<時間』という思いが強く、実際、独立した理由も自由に時間をコントロールしたいという理由が多くを占めました。しかし完全に独立してから7年半が経過する中で、
「やっぱりお金って大切だよね」
と感じています。
もちろん、とにかく稼ぐことが第一というお話ではなく。誰にでも適正というものがあるのですが、それでもフリーランスの多くは、この“お金”について少し楽観視し過ぎているのではないか?と。フリーランスのメリットが多く叫ばれ、独立を後押しするような風潮がある昨今。このまま行くと、10年・20年後に後悔するフリーランスが増える気がしてなりません。
■未来は何が起きるか分からない
例えばご結婚されている女性で、旦那さんの稼ぎなど主収入が別にある場合は良いかもしれません。実際、あくまで個人的な感覚ですが、フリーランスとして活躍が取り上げられるのは、そうした環境下にいらっしゃる方が多い印象です。しかし性別を問わず独身の方、あるいは子どもの有無を問わずご結婚されている世帯主の方は、ちょっと事情が異なるでしょう。
<独身者の場合>
「自分は一生独身でいい!」と思っている方は、自分が生活できていれば十分と考えるでしょう。しかし人の心は変わるものですし、どこで、どんな出会いがあるか分かりません。実際、私の周囲にも何らかのキッカケから、独身思考→結婚願望に変化した方が多くいます。
ではそんなとき、1人で最低限の生活レベルしか収入がなかったら?特に男性は、よく考えてみてください。果たして、相手は安心して結婚してくれるのか。あるいは結婚していきなり、夫婦で生活できるレベルの収入にアップすることはできるか…疑問が残ります。相手が働いている場合でも、後述しますが出産の可能性だってあるでしょう。これは私の考えですが、男性は結婚して世帯を持つのであれば、やはり「自分一人でも家族を支えられる」という心構えが必要なのだと思います。
また独身主義の女性も、将来への備えは大切です。今現在の生活がなんとかなっているからと、安心していないでしょうか。死ぬまで生活を続けるのに、いったいどれだけの備えが必要なのか。1人暮らしだと意識する機会が乏しいようで、恐らく計算したことのある方は少ないはずです。「1人ならなんとかなる」なんていうのは幻想。まして年老いて働けなくなれば、貯金がない状態だと今現在の“最低限の生活”すら送れなくなります。しかも、いつ自分が働けなくなるかなんて分かりません。もしかしたら、老後を待たずに病気・怪我などで訪れるかも。ついでにお伝えしておくと、こうした病気・怪我などへの備えとして、ちゃんと保険に加入されている方も少ないのではないでしょうか。そうなれば“収入なし”に“医療費負担”のダブルパンチです。
将来への備えという意味では、やはり年金が思い浮かぶかもしれません。しかし皆さんご存知の通り、年金はもはや頼りとして考えられるものではないでしょう。ましてフリーランスの場合、多くの方々は国民年金に加入されているはず。たとえ老後受け取れたとしても、厚生年金と比べたら明らかに見劣りする金額です。試しに将来受け取れる金額を現実的な目線から算出して、その範囲でどの程度の生活ができるのか考えてみてください。きっと、少なからず不安を感じるはずです。
「これから十分貯蓄できるくらい稼げるよう成長するんだ!」
なんて声が聞こえてきそうですが、それも予測と希望に過ぎないもの。そういう考えは“そうなったら儲けもの”程度に考えておいた方が良いでしょう。たとえ稼ぎが少なくても、できるだけ早い段階から手を打たないと、気付かぬうちに手遅れになるかもしれません。
<結婚している世帯主の場合>
恐らくお子さんのいらっしゃるご家庭なら、ある程度は将来について考えていることでしょう。実際、子どもが産まれてくると予想以上にお金がかかるので、嫌でも思い知らされます。私は3人の子を持つ父親ですが、妻と将来に向けた話し合いを行うことが少なくありません。つい先日も、老後対策のため新たにいくつか手を打ちました。
たとえ子どもは考えていない場合でも、やはり心変わりはあるもの。また変な話、子どもは“授かりもの”ですから、夫婦という関係下ではいつ子どもを授かるか分かりません。そうなれば共働きの世帯でも、一時的に奥さんは働けなくなります。保育園や幼稚園が入りにくい状況では、場合によりそのまま働けない…という状況も、最悪のケースとして考えておくべきでしょう。
さらに子どもが産まれれば、それだけ家計負担は増加します。子ども手当があっても、食費や習い事、おむつ等の消耗品を含めて、さまざまな出費が伴うでしょう。もちろんそれ以上に“子どもがいる”という幸福が訪れます。しかし子どもが巣立つまで、かかるお金は想像を超えるものです。そうなれば貯金を切り崩したり、生活水準を落としたりしなければならないかもしれません。そしてお金の余裕がなくなると、やはり心にもゆとりが持てなくなる可能性が高い…これが現実です。私も独立当初、これは痛いほど思い知らされました。特に子どもという“守るべきもの”があると、その影響は大きいようです。さらに1人子どもが産まれたら、「やっぱりもう1人くらいほしいね」となるかも。すると家計負担は、人数に比例して増えていくでしょう。
もし夫婦二人での将来を考えて貯蓄など行っていた場合、子どもの出産によってその計画は崩れます。貯蓄は生活費等を踏まえて余裕が出た部分から行われるわけですから、出費が増えれば事情が異なるのは当然でしょう。私も子どもが産まれるたび、何度も計画変更を繰り返してきました。それでも、まだまだ十分とはいえません。
また、たとえ子どもを授からず暮らしていく場合でも、やはり安易に考えてはいけません。フリーランスはそもそも収入が不安定ですし、多くの方々が加入されている国民年金はアテにできない世の中です。いきなり収入が激減してしまい、せっかく備えてきた貯蓄を切り崩さないと生活できなくなる…なんてこともあるでしょう。
会社員とは異なり、フリーランスは将来の見えにくい働き方です。最悪のケースを念頭に置き、常に軌道修正しながら“十分な備え”を上回る対策を行っておくことをオススメします。
■いつまでも働けるなんてウソ
フリーランスには定年がありません。そのため、1つのメリットとして「いつまでも働ける」ことが挙げられます。また書籍やインターネット記事などを読んでいると、フリーランスに関しては「働ける限りは働こう」といった内容がよく書かれているようです。
しかしだからといって、いつまでも働けるわけではありません。職種によっては、年齢と共に業務効率が低下することがあるでしょう。あるいは若い世代と比べられて、仕事が取れなくなる可能性もあります。もちろん病気などのリスクは年齢と共に高まりますし、そうした“働けなくなるタイミング”がいつ訪れるかなど、誰にも分かりません。また、たとえ働き続けても、同じだけの収入を得続けることは難しいではずです。どうも時間・場所にとらわれず自由に働いていると、「自分はいつまでだって働ける」と勘違いしてしまう方が多いように思います。
また、本当に“いつまでも”働きたいのか…というのも問題です。
確かに今現在は働き盛り、自由な働き方を手に入れてノッているかもしれません。しかし歳を重ねて、いつまでも同じ考えでいられるのでしょうか。冷静に考えてみると、恐らく多くの方々は「年を取ったら仕事から離れて暮らしたい」と思うはず。心身とも衰えた状態で働き続けることは、やはり大変なことです。もちろん働き続けられる元気年齢は上がっているのだと思いますが、限界まで働くことを望むか否かで見れば…どうでしょう。もしそれを望まないのであれば、やはり将来に向けた金銭面の備えは欠かせません。
■現実的な未来をイメージしてみよう
あらゆるリスクを考え、現実的に未来を考えること。フリーランスで働く方々には、そうした部分が不足している方が多いのではないでしょうか。特に駆け出しの頃は“今を生きる”ことに必死で、未来まで目を向けられないかもしれません。しかし未来とは今の延長線上であり、未来はそれまで自分自身がどのように生きるかで変わってきます。
一度、立ち止まって未来をイメージしてみてください。それは理想ではなく、今現在にもとづく現実的な未来です。果たして、思い描いてきた幸せな未来が待っているでしょうか。
もし少しでも不安を感じるなら、「どうすれば不安が払拭できるのか」を考えた対策を。フリーランスだからこそ現実的に考え、お金のことはしっかり自分で組み立てていきましょう。もちろん場合によって、貯蓄より将来への投資を行う必要があるタイミングもあります。私もついつい楽観視しがちなのですが、家族を含めた幸せのために、全力で考え取り組んでいるところです。