関東地方を通過していった台風15号。私の住む印西市はそこまで大きな被害が出ませんでしたが、付近では停電や列車運休、倒木などさまざまな被害が出ています。ちょうど「成田に着いたけど電車もバスも運休で動けない!」という知人を車で迎えに行ったところ、成田近辺は停電による影響から信号が止まって交通麻痺。さらに倒木で通行止めも発生していて、なかなか見られない光景でした。
私は幸いにも、もともと外出予定のなかった1日。そのため、朝のメールで「幼稚園バスが出ません」と言われても慌てることはなく車送迎、付近を走って車道・歩道に散乱した危ない倒木などを片付ける…という午前中を過ごしました。もちろん自宅で仕事して、午後はPlus Fitへ様子見に。で、成田への迎えという流れに繋がるのですが、別に台風で困ったことは自分自身としてありません。本日納期の案件も滞りなく終えましたし、チャットベースで詰めた新規案件も依頼に至っています。そんな1日を過ごしてみると、改めて思うことがあります。
「台風でも試行錯誤し、必死になって会社に向かうことって健全なの?」
私も会社勤務は2社経験しているので、列車運休に苦労したことは何度もあります。そのときは当然のものとして必死に会社(あるいは取引先)へ向かったのですが、その“当然”という意識に問題がある気がしています。もちろん今はフリーランスなので「お前が言うな」という意見もあるでしょう。でも、なんとなくモヤモヤするので…その辺のことを綴っておこうと思います。
■駅にできた長蛇の列に殺到する異様さ
列車運休となれば、窓口に「運行開始の目処は?」「振替輸送はどうなっている?」と質問が殺到。駅員さんは一人一人からの同じ質問に答えたり、放送やメガホンで呼びかけたり。中には全く悪くない駅員さんにクレームのごとく詰め寄る人もいて、ちょっと引いてしまいます。運行再開しても、すぐ時刻表の通りとはいきません。一部運休、遅延を残しての再開となれば、今度は少しでも早く列車に乗ろうと長蛇の列ができるでしょう。規制のかかった駅で列に並び、炎天下の下で待ち続ける姿を報道で見ました。
動かない電車をひたすら待ったり、ただ立ち尽くしていつとも分からぬ乗車を待ったり。何か別の手段がないかと充電が切れるほどスマホで検索しくるなど、よほど会社に対して強い忠誠心があるのでしょうか。私も会社員時代は、忠誠心が強かったとは言えませんが同じような感じでした。でも、一歩引いて外からその光景を見る、あるいは文章化してみると、私にはこれが異様に思えて仕方ありません。
■それが真面目に会社のために尽くすことなのか
もちろん、会社に対して労働力を提供することで対価(=給与)を得ているのですから、会社のために尽くすというのは間違いとは言えないでしょう。会社あるいは取引先などに迷惑をかけまいと、必死になるのも悪いことではないのかもしれません。ある意味で、日本人らしい光景とも言えます。
しかし、そこに費やされている時間や苦労、あるいは精神的疲労は、本当に会社のためになっているのでしょうか。結局のところ半日以上も大混乱で戦っただけで仕事はできず、会社に対して利益を生む動きにはなっていない。たとえ会社に到着しても、疲労し切った状態ではパフォーマンスが下がります。もしかしたら取引先は臨時休業を選択していて、予定していた仕事は進まないかもしれない。それでも会社は交通費と給与、あるいは光熱費などの諸費用を支払い、出社した側もとりあえず終業時刻まで会社に居続ける…なんか変じゃないでしょうか。
日本人は真面目だから、いくら台風だろうとキッチリ会社に向かう。そう言えば聞こえが良いですが、冷静に考えれば異常とも思えます。今回の台風では、死傷者も多く出ているとのこと。例えば暴風雨の中でも「出社しなければ」という義務感で出かけ、その道中で負傷あるいは命を落とすようなことがあったら?これは、決して他人事ではありません。
■休むという選択が及ぼすメリット
こういうとき、働く側は「休む」という選択を躊躇せず行ってほしいと思います。それが、結果的に自分自身を守ることになるから。負傷などに及ばないとしても、身体的・精神的な疲労はもの凄いはずです。なんとか会社に到着して、疲労困憊でパフォーマンスの低いままなんとか仕事を片付け、また苦労して帰宅したらグッタリ…。中には、その状態で家事・育児という方もいるでしょう。そんなの、健全であるはずがありません。
それなら1日を安全に過ごしながら、溜まった家のことを済ませてしまう。そして台風の影響がなくなってから、その分だけフルパワーで仕事に取り組んだ方が良いのではないでしょうか。1日休んだだけで、そこまで大問題になる仕事なんてほとんどないはず。必死に会社へ向う前に、こう問いかけてみてください。
「今から会社へ向かってやろうとしている仕事は、本当に今日じゃなければできないことなのか」
きっと昨日出社した方の中にも、振り返ってみると、別に無理やり出社する必要はなかった…と思う方がいるでしょう。自分にとって休んだ方が良い状況なら、ちゃんとその意思を伝えること。しっかり理由があれば、会社側もNoとは言えないはずです。もしそれでも無理に出社させようとするなら、それは会社側が異常なのかもしれません。
■休ませられる企業の方がカッコいい
企業側もこうした事態では休ませる、あるいは企業として休業にするという選択を即断できた方が良いと思います。それは、もちろん社員を守ることに繋がるだけでなく、今の時代で「1日休むだけで会社が回らないのはヤバい」から。もちろんセキュリティ等の面から、仕事を完全リモート化することが困難なケースはあります。しかし緊急時、例えば事務処理やメール対応、オンライン会議などすら自宅で行えないのは、“時代遅れ”としか思えません。
完全に休ませて「仕事しなくてOK!」が一番ですが、せめて在宅ワークに切り替えられる。まして、今回のような台風はあらかじめある程度の規模や軌道が分かっており、起こり得る事態も予測できるはずです。前日のうちに判断し、社員および取引先にも休業とする旨を伝えられれば、大きな混乱は生まれないでしょう。私はそういう体制を整え、即断できる企業こそカッコいいと思います。そして台風や地震など災害の多い日本だからこそ、企業の備えとして必要な体制なのではないでしょうか。
■フリーランスの場合は自分次第
フリーランスの場合は、悩ましいところかもしれません。休むという選択は、社員側というより経営者側の視点から判断すべきものとなります。もちろん、そもそも外出予定がなければ問題ないでしょう。しかし、私のようなライターで取材予定がある、企業との打合せがある、あるいは常駐案件で稼働しているなど。他者が関わっている場合は、自らの意思として伝え、交渉・調整が必要になります。その結果、交渉が及ばず「休みなんて無理」という結論に達してしまったのなら、それは従うしかないでしょう。フリーランスという働き方は、すべて自分自身に責任があります。
私の場合、普段から打合せはオンライン化を進めています。初期ではどうしても対面を希望されるケースもありますが、それでも「次からはオンラインで」とその場で提案・交渉するようにしているのです。現在、打合せのために外出することは、月に1回あるかどうか。あとはメールやチャット、ビデオ会議で問題なく仕事が行えています。最近は取材も、人物取材ならオンラインでということが増えてきました。ただし、この場合は「オンラインでも問題ない」と思ってもらえるスキルが必要です。打合せは滞りなくスムーズに進行し、取材も十分なヒアリングと変わらないクオリティでの納品は必須となります。
■無理せず自分スタイルで働く
もちろん休むか否かは、個人あるいは企業の判断です。しかし、少しでも異常だと感じたのであれば、それは変えるべきだと思います。なぜなら異常を感じるなら、それは本当にありたい自分(あるいは自社)の姿ではないから。無理せず、自分スタイルで働けること。それが結果的に、個人・企業のパフォーマンスを最大化させてくれるのではないでしょうか。
最後に、まだ停電や断水をはじめ、被害に見舞われている方がたくさんいらっしゃいます。屋外にはまだ倒木など危険エリアもあり、何より安全第一で。少しでも早い復旧を願っています。