ランサーズの資金調達やクラウドワークスのマザーズ上場をはじめ、クラウドソーシング業界は2014年最後まで話題が絶えない。ライターとして仕事をしていても、クライアントから“クラウドソーシング”というワードが聞かれることは多い。フリーランスとして働く身からすれば、“個人への発注”が広がることは嬉しいことだ。
しかし先月のブログ『クラウドソーシングはどこへ向かう?』でも書いたが、個人的にクラウドソーシングはプロ向けとは異なる方向に進んでいると思っている。エンジニアやデザイナー、イラストレーターなど“知識やスキルが無いと仕事ができない”仕事は若干違うのかもしれないが、少なくとも私が身を置くライターという仕事では間違いないだろう。
あらかじめ断っておくが、主婦や定年退職後、あるいは地方で仕事が得られないといった人々に業務機会が提供されること自体、私は素晴らしいことだと思っている。その意味でクラウドソーシングは有効であり、多くの人々から求められるサービスだ。
しかしその反面、発注側である企業からは、こんな声も聞こえ始めている。
「良い人材になかなか出会えない」
「発注してみたら、クオリティが予想より低かった」
「直前になって仕事をキャンセルされてしまった」
あくまで私はライター業での話しか出来ないが、こうした経験のある企業は少なく無いだろう。では、いったいなぜこのようなことが起きてしまうのか?受注・発注双方からクラウドソーシングを利用してきた経験から、少し考えてみたい。
■プロライターのクラウドソーシング離れ
プロライターと話をすると、クラウドソーシングを使っている方は思った以上に少ないことが分かる。しかし実のところ、中には「以前は使っていた」という方が多いのだ。では、なぜ今は使っていないのか。共通しているのは、
「安価な仕事ばかり増えてしまった」
「対価の見合う仕事を探すのが大変」
といった理由。よく探すと本当に“プロ向け”の仕事もあるのだが、その他の案件が膨大過ぎて、見つけるだけで時間が掛かるのである。
またプロライターは、自身でも仕事を獲得できる人が大半。中にはWEBメディアや出版社などと、専任契約を結んでいる人もいるだろう。では、そもそもどうしてクラウドソーシングに登録したのか。その理由は人によって異なるが、次のような方は多いはずだ。
- 本業で時間が空いた際の収入源にしたい
- 自分の力だけでは出会えないクライアントとの繋がり
- PushではなくPullでの営業ツール(=スカウトを受けたい)
つまりライターにとって、クラウドソーシングは副業的な扱いであることが分かる。もちろん必ずしもそうではないが、該当する方は多いだろう。フリーランスである限り仕事量には波があり、収入は不安定といわざるを得ない。だからこそ副業であるとしても、クラウドソーシングは魅力的なサービスとなり得るはずだ。
しかし仕事は、何でも良いというわけではない。プロであるからには、やはり相応の収入は必要だ。実力のあるライターほど、自身を安売りしない。そんな中、先に挙げたように『単価が安い』『対価が見合わない』仕事が増え続ければどうなるか。プロライターが“クラウドソーシング離れ”してしまうのは、必然といえるだろう。
ちなみに私は、今でもクラウドソーシングを利用して仕事を得ている。しかし残念ながら、新しいクライアントから仕事を受けることは非常に少ない。その殆どは、以前から継続的に依頼を受けているクライアントが大半なのだ(私は2010年からクラウドソーシングを利用している)。クラウドソーシングは直接取引を原則禁止としているので、継続依頼もまたクラウドソーシング上で行われているのである。
■“誰でもなれる”ライターという仕事
しかしクラウドソーシングの登録者を検索すると、『ライター』に属するフリーランスワーカーが驚くほどヒットする。ここで
「なんだ、ライターはたくさんいるじゃないか」
と思う方がいるかもしれないが、残念ながらそうではない。ここで問題となってくるのが、ライターの定義だ。
「どうすればライターになれますか?」
たまに、こんな質問をされることがある。本来なら質問の意図や目指すものなどを聞いてアドバイスするところだが、ここでは結論のみ伝えておこう。誤解を恐れずに言うのであれば、ライターになる方法など極めて簡単。名刺に『ライター』と記載し、自分がライターだと名乗ってしまえば良い。ライターとして仕事をするのに、経験や資格など必要ないのだ。
“文章を書く”ことは、誰にでもできるだろう。誰しも作文を書いたことはあるだろうし、大学の論文、仕事のメールや資料など、文章を書くという“作業”は人々にとって身近だ。そのため、例えばデザインやプログラミング等の特別なスキル・経験を持たない人がクラウドソーシングで副業を始めると、
「ライティングなら、自分にも出来そうだ」
と考えるのである。
さらにそれを後押しするかのように、クラウドソーシングには『未経験歓迎』『スキル不問』などを掲げるライター募集案件が山のように登録されているだろう。ここで
「誰でもライターになれるんだ」
という大いなる勘違いが生まれてしまう。なぜならこの仕事に応募した瞬間から、その人は“ライター”となるからだ。本音を言ってしまえば、これは迷惑な話である。そこには経験や実力による棲み分けもなく、経験20年以上のベテランでも経験1日目の新人でも、あるいは小遣い稼ぎで文章を書く人もまたライターと呼ばれるのだから。
■ライター不足が生まれる理由
しかしこれが、最初に挙げたような発注者側からの声に繋がっている。つまりプロライターを探そうとクラウドソーシングで仕事を頼んでみたものの、想像以上にクオリティに不満を覚えるような記事ばかりが挙がってくるわけだ。誤字脱字や言い回し、文章表現はもちろん、ときには著作権に抵触するようなものまで…。
「ライターが見つけられない」
という声がよく耳に入るのは、発注側の求めるライターが“プロ”だからこそ。逆にクオリティなど必要としない発注者は、
「ライターは探せばすぐ見つかる」
などと口にする。仕事をする中で、実際に何度も聞いた言葉だ。つまりこうした発注者にとっては、経験やスキルなど関係なく、“文章を書く人”を一括りにライターと呼んでいるのだろう。
プロライターの原稿料相場は、あまり知られていない。もちろんライターによって多少単価ラインは異なるが、少なくともクラウドソーシングで多く見られる『高単価!1文字0.5円!』なんて仕事は、低単価も良いところである。WEBが紙より単価が下がるのは、それが直接的に利益を生むものではないといった背景から分からなくはない。しかし
「お金は出せないけど、プロに仕事を頼みたい」
なんていうワガママは、残念ながら叶うものではないだろう。プロライターはその仕事に誇りを持ち、自らのスキルで得た収入から生活している。時給1000円にも満たない(1000円だって安い)ような仕事に、応じている時間などない。そんな仕事ばかり受けていたら、私なんて家族を養えなくなってしまう。
しかし昨今、WEBにおいてもコンテンツの質が重視される傾向になっている。SEO対策の変化によるところが大きいが、コンテンツマーケティング等はその最たる例だろう。コラムなどでノウハウをアウトプットするなど、独自に“読まれる”コンテンツ制作に取り組み始めている企業も少なくない。しかしそうした企業やSEO会社の多くに、プロライターは在籍していない。
「ライティングもやります!」
という業者は多く見られるが、ほとんどは結局ライターへ外注している。もちろん外注によって求められるコンテンツが完成するのならば、何も問題はないだろう。むしろ何もしらない社員が、「できるだろう」と適当にライティングするより有り難い。しかし前述の通り、いわゆる“ライター”は数ばかりが増えてしまった。その中からプロを探すことは至難であり、見つけたとしても単価面で折り合わないケースも多い。
こうした背景から起きているのが、“ライター不足”である。ここでのライターとは、つまりある程度経験のあるプロ(あるいはセミプロ)ライター。詳しい数など分からないが、国内のライターを名乗る人々の中で、それはほんの僅かな人数といえるだろう。
少し宣伝になってしまうが、私もナレッジ・リンクスという会社でライティング業務を請け負っている。現在、基本的に未経験ライターは在籍していないが、正直に言ってプロライターも少ない。中には10年・20年と経験を積んだ方もパートナーとしてご登録下さっているが、本当のプロは多くが自ら仕事を得ることができるのだ。
ボリュームゾーンは、ライター経験4〜5年という方。そこに社内で校正・編集を加えることで、プロに近いクオリティまで引き上げる。なぜ“近い”のかというと、プロの持つクリエイティビティは、やはり“書く”段階から得られるものだからだ。では、なぜそんな事業に取り組んでいるのか。それは
- 本当にプロとして活躍したいライター志望者を支えたい
- 良質なコンテンツを少しでも多くの企業に届けたい
という2点に尽きる。そのうえで、パートナーの方々がそれぞれ自分なりの自由な働き方を実現させてくれれば、これほど嬉しいことはない。
■クラウドソーシングの使い方
以上のような点を踏まえ、『マンパワー確保』や『コスト削減』を目的にライターを探すのであれば、クラウドソーシングの利用はおすすめだ。場合によっては、翌日納品など急な依頼にも対応してくれる人が見つけられる。
ただし納品される記事のクオリティに保障はなく、期待すべきではないだろう。よくトラブルになるのが、納品記事に対し「求めているレベルではない」として修正を求めるケース。いつまで修正してもイメージに合わず、時間ばかり過ぎていく。しかし低単価で人員を確保するのであれば、これは仕方のないことだ。経験の浅い(あるいは無い)人に頼んでいるのだから、修正したところでそれ以上のクオリティは望めない。初めてバスケットボールを手にした人に、3Pシュートを入れろと言っているようなものである。そのため単価とクオリティのバランスについては、事前によく検討しておくべきといえるだろう。
「では、どうすればプロライターが探せるのか?」
最近ではライターにもホームページを持つ人が増えているが、多数ではないかもしれない。ライターの登録サイトなどはと言われれば、クラウドソーシングと同様に経験やスキルで棲み分けはされていないだろう。
実のところ、クラウドソーシングでもプロライターに依頼することはできる。プロライターがクラウドソーシングを離れたと書いたが、実際に登録解除まで至っている人はそこまで多くないのだ。ときどきはサイトにログインしているかもしれないし、スカウトメールなどは受信している人もいるだろう。問題は膨大なライター登録者の中から“プロ”を探し出し、自社の案件に興味を持ってもらうことである。
この続きは、また次回のブログで。
まずはライターという仕事の実態について、少々乱暴だが分かって頂けたのではないだろうか。プロがプロとして仕事ができる環境は、これからの時代にどうしても必要となってくるだろう。私は仕事を受ける側、依頼する側の双方からクラウドソーシングを利用してきた。その経験をもとに、次回はあくまで個人的考えながら、できるだけ高い確度でプロライターに依頼するための方法をご紹介したいと思う。
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