いいでしょ?僕の人生

日本にランニング文化を根付かせたい


東京マラソンが初開催された2007年を皮切りに、ランニングブームが巻き起こりました。何を隠そう、私もランニングを始めたのは2011年のこと。ブログをご覧の中にも、まさにブームの渦中で走り始めた方は多いでしょう。

しかし、ブームは永遠に続くものではありません。最近はランナー増加も落ち着き始めたようです。これは単純に『ランニングを始める人が減った』だけでなく、『やめる人』の存在もまた背景にあるのでしょう。ランナーの定義は難しいですが、私の周りにも以下のような方がたくさんいます。

  • 仕事が忙しくなって走らなくなった
  • ダイエットに成功して走らなくなった
  • 怪我ばかりで続けられなくなった 等

始めるのもやめるのも、当然ながら本人の自由です。私は仕事柄ランニングの楽しさを伝える側にいますが、誰にでも「走りなよ!」と強制する気はありません。他にもいろんなスポーツがあるし、スポーツ以外にも楽しいことは山ほどあります。

しかし怪我で止めてしまうのは、非常にもったいないこと。怪我とは無縁のランニングライフが送れれば、たくさんの人が今もなおランナーだったかもしれません。ここでは深堀りしませんが、“怪我はつきもの”ではなく回避出来ます。そのためには、まず“走り方”をしっかり身につけてほしいものです。私も『走り方教室を行っていますが、学ぶ場所は探せばたくさんあります。

ランニング人口が、どう推移していくのか。今の流れで見れば、あと少し減ったところで維持…といったところでしょうか。しかし、未来は変られるもの。私は今こそランニングというスポーツのあり方を見直し、“ランニング文化”を作り上げられたらと考えています。

■ランナー数と大会数のギャップ
ランナー人口増加が落ち着き始める中、大会数はどんどん増加しています。例えば今年、以下のような大会が初めて開催されました。

  • 富山マラソン
  • 金沢マラソン
  • さいたま国際マラソン など

さらに2016年も、函館や鹿児島などで大会が生まれる予定です。分かりやすく都市型マラソンを並べましたが、小規模なものを含めれば、毎年のように大会数は増加しているでしょう。

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しかし残念ながら、すべての大会が上手くいっているわけではありません。出場者募集に難航し、中には定員割れを起こす大会も。また、日程の重なる大会が多くなっています。

歴史ある人気大会は、現状問題はないでしょう。むしろ先着で即締め切りになったり、抽選化したりするケースも少なくありません。ランナーにとっても、定評ある人気大会は魅力がありますし、安心です。一方で定員割れする大会がある…この格差は、運営側にとって大きな問題ではないでしょうか。

特に多いのが、地域活性・観光誘致を目的とした大会。その多くは、ランナーにとって宿泊を伴う遠征となるでしょう。しかしランナーも、ランニングに使える資金には限界があります。

「興味はあるけど、遠いから無理だな」
「遠征費を使えば、他に1~2本大会へ出られる」
「遠征するほど、満足度の高い大会なのか」

そうした考えが浮かぶ中、どうやって参加者を集めるのか。もはや、安易に大会を開催できるフェーズは過ぎています。

■ランニングを通じた他種目へのチャレンジ
最近、ウルトラマラソンが増えています。先に「大会運営は難しい」と述べましたが、その中でウルトラマラソンは、まだ伸び代があるでしょう。ハーフ、フルと完走し、

「もっと長く走れるんじゃないか?」
「もっと大きな達成感が欲しい」

と考えた人々が、ウルトラマラソンへと距離を伸ばしていくからです。そしてウルトラランナーは、ランナー全体に比べてまだ少数。これから増えていくのだと思っています。

ウルトラマラソンも、もちろんマラソンの1つです。しかし「さらなる挑戦を」という傾向は、他種目にも見られるのではないでしょうか。
例えば同じ“走る”という軸から、トレイルランニングに興味を持つ。あるいはスイムとバイクを加え、トライアスロンに挑戦する方も少なくありません。あるいは運動そのものに目覚め、格闘技に目を向ける方もいるでしょう。

このようにランニングブームは、間接的に他種目にも影響を与える可能性があります。以前取材させて頂いた、ゴルフとランニングを組み合わせた「スピードゴルフ」という新たなスポーツも、私にとっては衝撃的でした。
走ることを根底に、他種目、あるいは新たなスポーツ誕生へと広がっていく。ここに、ランニング文化形成のヒントがありそうです。

■まず“楽しい”から始めるランニング
カラーランやバブルラン、エレクトリカルランなど、国内にファンランイベントが増えてきました。仕事でいくつか参加しましたが、ランナー目線で言えば“ランニングの大会”ではありません。あくまで、楽しみの中にランニングが組み込まれたイベントと言えるでしょう
しかしこのイベント、毎回とても多くの方々が参加しています。特に多いのが、学生を始めとした若い層。一般的なマラソン大会とは、平均年齢も大きく異なります。

またマラソン大会では、よく仮装ランナーも見かけます。一部では仮装を禁止する大会もありますが、仮装ランナーの有無は大会規模を問いません。
何を隠そう私もよく仮装するランナーの1人。むしろ“仮装賞”を設ける大会も増え、ランナーのみならず応援まで巻き込み盛り上がります。競技としてのマラソンとは、一線を画すものと言えるでしょう。

ランナーの中には、ファンランや仮装ランナーに否定的な方もいるようです。特にシリアスランナーから見れば

「マラソンは競技だ!遊びじゃない!」

という気持ちがあるのかもしれません。その意見も分かります。
しかしこうした楽しみ方は、ランニングがより多くの人々にとって身近になる、良い機会ではないでしょうか。面白そうだから参加する。実際に楽しかったから、もっと走れるようになりたいと思う。いつしか走ること自体が楽しくなる…という流れは、素晴らしいと思います。むしろ「走らなきゃ」という義務感がない分、無理して怪我もしませんし、長くランニングを楽しんでくれるのではないでしょうか。

  • 大会前後の体重差で競う
  • 申告タイムとゴールタイムの差で競う
  • 歩いても走っても一番楽しんだ人が優勝

など、一般的なマラソンのイメージとは異なる大会・イベントもあります。きっと初心者にとって、参加へのハードルは低いでしょう。気軽にランニングに触れられる。そんな環境作りが出来れば、ランナー人口は再び増えてくるかもしれません。

■大会以外にも走る楽しみを
仕事の繋がりもあって、最近私は“旅ラン”を広めたいと思っています。フラッと訪れた地を、自分の脚で走って回る。ただ観光ガイドでチェックした場所へ車で行くのとは異なり、さまざまな出会いや発見があるでしょう。

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例えば私は『ぐるたび』で、島ランシリーズを連載しています。1周を走って回れる離島を紹介するものですが、どれも甲乙つけがたいほどオススメ。風を感じ、景色を楽しみ、思うままに走る。ランナーにとって、これほど贅沢な旅はありません。お酒や食事も、より美味しく感じられます。
もちろん、旅に出るためには、時間とお金がかかります。それなら、次のようなプランはいかがでしょうか?

<風呂ラン>
Google Mapを開いたら、『風呂』『銭湯』『温泉』などで検索。自宅からのルートを調べ、走れそうな範囲にある風呂施設をゴールに走ります。
コースがたとえ住宅街だとしても、「ここに繋がるんだ」「こんな場所があるんだ」と発見がたくさん。時間があれば温泉を起点に、スタートに適した駅を探して走り出すのも良いでしょう。走った後は、温かい風呂で汗を流しリフレッシュ!最高です。

<好物店ラン>
私の場合は、ラーメンorつけ麺。大好きな食べ物のお店を折り返し地点とし、走って行きます。他のお客さんがいるので、入店前に汗を落ち着かせ、できればデオドラントシートなどで身体を拭きましょう。美味しく食べたら、また走って帰ります。
パンやスイーツなど少量ずつ食べられるものなら、何店舗か回れるコースを作るのもオススメ。気に入ったお店に、後日家族や恋人、友人を連れて行くのも良いかもしれません。

大会ではなくても、ランニングを楽しむ方法はたくさんあります。エントリー費が不要な分、そのお金は他に使うことができるのもメリットです。クリック合戦や抽選で残念な結果になったら、日を改めて旅ランに行くのも面白いでしょう。もし「どこを走ろうか」と迷うなら、Runtripというサイトを参考に(宣伝みたいですみません)。私もいくつか投稿していますが、全国各地のオススメコースを検索できます。でも出来れば、自分だけのオリジナルコースも発掘してみてください。

1人で走るのが嫌なら、ラン仲間を誘ってみてください。特に風呂ランは、私の周りで密かに実践者が増えつつあります。ランニングを、もっと日々の生活に組み込んでみてください。きっと、新しい楽しみが増えるはずです。

■海外ランナーに誇れる文化を根付かせたい
スポーツビジネスに身を置いていると、やはり感じるのが東京オリンピックに向けた動き。国内外を問わず、さまざまな企業・人が活発に動いています。

オリンピックでは、海外からたくさんの人々が日本を訪れます。もちろん、その中にはランナーもいるでしょう。そんなとき、日本のランナーを見てどう感じるか。

「日本には、素晴らしいランニング文化がある」
「また日本へ、ランニングを楽しみに来たい」

私は、そう言ってもらいたいと思っています。そのために何ができるのか。もちろん、スポーツライターとしての情報発信も、その一端を担うはずです。旅ランのように、“楽しみ”としてのランニングを知ってほしい。そして怪我なく、楽しく走れるランナーを増やしたい思いもあります。

まもなく、2015年が終わります。きっと2016年という短い間にも、ランニングを取り巻く環境は大きく変わるのでしょう。そこで自分にできることは?自分なりに強い信念を持って行動していきます。