中野坂上を後にして、いよいよ都心部へと進んでいきます。ここからは“チェックポイント”が設けられており、決められた場所を写真に残さなければいけません。
大江戸コースは少し道が複雑なので、ちゃんとコース通り(=正しい距離で)走れているかを見るのに、写真が用いられているんです。200kmともなればランナーもバラバラですから、チェックスタッフを置くのも厳しいのでしょう。
スイーパーは写真不要なのですが、直後で数名のランナーさんとご一緒させて頂くことになり、ついでに私も撮影しておきました。
■3つのチェックポイント

まずは都庁。ちゃんと第一本庁舎の看板を撮らないといけません。
しかし撮影後に走っていると、目の前からコースを逆走してくるランナーが。
「もしやリタイア!?」
と思い声を掛けたところ、都庁で写真を忘れたとのこと。この大会、ちゃんと地図を読む力も必要なんですね。特に東京在住者でなければ、都心部は迷いやすいのかもしれません。

次はこれ。角を曲がった直後にあり、危なく見落としそうでした。こちら、グランドハイアット東京の前にある石のオブジェです。地図で位置をチェックしておかないと、写真だけ見ておいたところで分かりません。

続いてのチェックポイントは程近く、東京タワーにあるこちらノッポン兄弟です。ちゃんと東京タワー麓付近まで、坂を登らせてくれるんですね。140km地点手前なので、普段ならちょっとした坂でもランナーを苦しめます。
この辺りまでは、4名程で一緒に走っていました。同じペースの相手がいれば、1人より一緒の方が走りやすいですからね。私はすでに次エイドに30分前着くらいを予定。ここで離れてしまうと、恐らくゴールが厳しくなります。様子を見つつ、言葉を投げかけながら一緒に走らせて頂きました。
■皇居を1周
ランナーの聖地とも言える皇居。到着したときには、すでに市民ランナーが多く走っていました。何やら大会が行われているようで、中にはゼッケンを着けた人がチラホラ。

この時点で、2名のランナーと一緒。足取りが重く、歩いたり走ったり…を繰り返しながら進んでいました。それぞれのペースで進むものの、一方が歩いているうちにもう一方が追いつく。
途中にエイドがありますが、この皇居は1周走ることがMUST。皇居に差し掛かった際、皇居を回ってきたランナーと出会います。5kmという距離、ここまで走破してきたランナーにはどのように映るのでしょうか。短いようで長い…そんな感覚だと思います。

そして144km地点、エイドへ到着!大勢のスタッフが迎えてくれました。先に到着したランナーが、何名か休んでいる姿も見られます。私も一旦荷物を下ろし、地図の入れ替え&チェック。温かい食べ物を頂き小休憩系です。
到着時間は制限30分前。予定通りでした。ここからは他のスイーパーと一緒に制限時間着に合わせて進むため、私はしばらく待つことに。続々とエイドを出発するランナーにエールを送りつつ、
「ここからは、僕に追いつかれちゃダメですよ!」
などと声がけ。笑みを見せながら出て行く姿には、疲労感と共にゴールへ向けた強い意志を感じました。
ほどなくもう1名のスイーパーが到着し、制限時間を待って出発。皇居の残りをぐるりと走り、次は押上(スカイツリー下)のエイドへ向かいます。
■最後のチェックポイント
エイドから一緒に出たランナー、そして先に出た数名のランナーを巻き込んで浅草方面へ。2名のスイーパーに後ろから追われるのは、プレッシャーも多いことでしょう。
一部東京マラソンのコースを通りつつ進むと、程なくして押上にある次のエイドへ。

中に入ると、おしなり商店街のイメージキャラクター「おしなりくん」が迎えてくれました。数名、ランナーも休んでいます。しかし、あまり休んでいる時間はありません。すでに制限時間を意識し、私たちはギリギリのペースに合わせながら走り始めているのです。
エイド目の前にはスカイツリー。向かうは、最後のチェックポイント。エイドを数名のランナーと一緒に出発し、集団で向かいました。

そして、浅草寺本堂へ到着。ここが最後のチェックポイントです。
すでにお昼時ということもあり、たくさんの観光客で賑わっていました。ここでもう1名のスイーパーが合流して全員集合。写真を素早く撮影し、ランナーは先へと進んでいきます。
しかし雷門まで抜けるまでは、とても走れる状態ではありません。周囲の方々に迷惑とならないよう、間を縫って歩きます。制限時間が迫る中、焦りも生まれてきていたことでしょう。少しずつランナーがバラけ始め、数名のランナーはスイーパー集団から飛び出して行きました。
この頃、少しずつ雨が降り出してきます。空は暗く、どうやらこれから強い雨となりそうな予感。走っていれば、冷たい雨はむしろ火照った身体を冷やす気持ちよさがあ
ります。しかし歩いてしまうと、身体をどんどん冷やします。
「気持ちとしては、雨が強くなる前にできるだけ進んでほしい。」
そう願いながら、私はただ懸命に進むランナーの姿を追い、ときに声をかけることしか出来ません。
ここからは、東京を出て再び埼玉県へ。ゴールへ向けて進むのみです。しかし雨が強まり写真が撮れず…文章Onlyとなるのでご注意ください。
■ゴールまでの道程
現時点で距離は158km。残り約45kmとなりました。
いつしか周囲には多くのランナーが。そう、私たちは制限に合わせたペースで走っているため、先行ランナーの中でもペースが落ちてきている人は、少しずつ追いついていくのです。しかも少し余裕をもたせたペースで走っているので、イーブンで考えるとやや速め。出来るだけ多くのランナーに完走してもらうためには、後半のペースダウン等まで考えて走る必要があります。
走れている人は、あまりプレッシャーを掛けずにそのまま進んでもらう。ペースダウン、あるいは歩き出している人については声を掛け、フォローしながら進む。
165km付近から雨が強まり、コンビニに立ち寄ってカッパを購入するランナーも。ビニール手袋を装着し、雨の侵入を防ぐというナイス対策も見られました。私も上下ゴアテックスのウェアを着こみ、帽子を被って対応。時間の経過と共に、少しずつ気温も下がり始めていました。
「ここのなか卯で、休憩する予定だったのになぁ…」
178.5km地点で通過した高島平のなか卯では、スタッフの方が外に出て応援してくれました。休憩予定だったランナー…残念ながら、立ち寄っていては間に合いません。
しかし、空腹状態では力も出ないでしょう。特にこれから埼玉県へ入っていく道程には、店など無い河川敷コースが待ち構えています。トイレ休憩を始め、補給などでコンビニに立ち寄る人が増え始めました。
「追いつくので、ちょっとコンビニに寄らせてください」
一緒に走っていたランナーが、そう告げてコンビニへ向かいました。ちょうど私もトイレに行きたかったので、一緒に向かいます。どうやらお腹が空いた様子で、食べ物&飲み物を補給。私も眠気が出始めていたので、コーヒーを飲みました。
「一緒に残って良かった」
コンビニを後にして、すぐにそう思いました。約4分でしょうか。既に一緒に走っていたランナーの姿は、遠目にも見えません。もちろん私がいなくても、追いつけたかもしれません。しかし疲労した身体と精神状態では、“追う”ということがどれだけ大変か。
「じゃあ、行きましょう!まずは追いつきますよ。」
そう伝えて走り始めたランナーの姿は力強く、170km走った後とは思えないスピードで走り始めました。集中を切らさないよう、あまり声を掛けずに後をついていきます。なかなか前にランナーの姿は見えない…しかし、このペースなら間違いなく近づいているはずです。
なんとか荒川河川敷へ入る前に追いつき、他ランナーに合流。しかし1名、残念ながらここでリタイアする方が出ます。残り約25kmは、短いようで長い。雨が振り、いよいよ日が落ちようとする中においては、その判断もまた英断と言えるでしょう。
河川敷はとにかく真っ直ぐ、周囲には何もありません。しかし道幅は歩道に比べて広く、他に人もいないので走りやすさはあるでしょう。見晴らしが良いので、遠くに先行ランナーの姿も見えました。私たちは最後尾を走りつつ、ランナーを前へと進めます。
長い河川敷を8km強。最終エイドに到着です。周囲は薄暗く、夜の訪れを予感させました。河川敷を少し降りてエイドへ。幸か不幸か、エイドに入るなり雨脚が強まります。気温が下がり、止まっていると寒い。温かい飲み物を頂き、お菓子などでお腹を満たしました。そしてスイーパーの1人が、エイドに残っているランナーにこう告げます。
「私たちは18:00にここを出ます。制限時間に合わせた一定ペースで走りますので、追いつかれたら間に合わないと思ってください。」
この声を聞き、休憩も早々に外へと出て行くランナーたち。誰もが夜に向けてヘッドライトやハンドライトを装備し、雨対策をより入念に行っていました。私たちは宣言通り18:00を待ち、8:00/kmで走り出します。
周囲は少し前とは比べ物にならないほど強い雨。足元がいつの間にか水たまりになり、暗いため何度もその中へ足がダイブしました。「良いアイシングだ」なんて言いながら走りましたが、実際は指の感覚が無くなりそう。しかし身体を温めたいからと言って、ペースを乱すことは厳禁です。
誰にも追いつかないことを願いながら進みますが、残念ながらそうもいきません。1人、また1人とランナーに追いつきます。河川敷を出ると、今度は細く暗い道が続くバイパスへ。いつしか私たちスイーパーも、自然と3手に分かれていました。私は一番前、制限時間でゴールする役目です。他の2名は、それぞれ後続ランナーを、とにかくゴールまで連れて行くことに注力してくれました。
暗闇の中、コンビニがあれば中に入って確かめます。そこでロスしたタイムは、ペースを上げて調整。GPSウォッチをエイド毎に充電しておいたので、ペース配分は問題ありませんでした。途中、カッパが壊れたという人がコンビニで着替えている光景が。時間がいまいち把握できていなかったようで、
「私は、今制限ギリギリのペースで走っています。今出ないと間に合いませんよ。」
と伝えると猛ダッシュ。その後、そのランナーの姿は見かけなかったので、恐らくゴールしたのでしょう。暗闇の中、1人、また1人とランナーに合流し、ペースを見ながら進みます。後ろ髪を引かれつつ、どうしてもついて来られない人は置いていくしかありません。
「後ろから他のスイーパーが来ます。でも、ゴール目前ですから頑張りましょう!」
そんな言葉を投げ掛け、私はペースを維持。 バイパスを抜ける頃、私は男女1名ずつ、2名のランナーと一緒に走っていました。時間はかなりギリギリ。しかし、ゴールまであと2kmです。地図を見る余裕もなく、とにかく走り続けるランナー。しかし、女性ランナーが遅れ始めてしまいました。私は一旦下がってこの女性ランナーにつきます
が、ペースが厳しい。前を走る男性ランナーでもギリギリ間に合うかどうかの瀬戸際です。
そのため、やむを得ず決断。ペースを上げて男性ランナーを引っ張ることに。コースに若干不安を感じながらも、迷っている時間はありません。一歩、また一歩…ついにゴールを知らせる旗が見えました。最後の角を曲がるとスタッフの方が迎えて下さり、
「間に合うよ!大丈夫!」
という声。制限時間ギリギリ、なんとかゴールすることができました。
時計を見ると、制限時間20:00を回っています。スタートのタイミングが人によって少し異なるため、場合により数分余裕があるとのこと。これを聞いて、
「あの女性も間に合うんじゃ!?」
と頭に浮かび、急いでコースを戻りました。すると、懸命に走り続ける姿が。この方も、なんとか制限時間内にゴールすることができました。ゴール地点を見渡すと、最終エイドで先行出発したランナーの姿もあります。残念ながら間に合わなかったランナーも、他のスイーパーがしっかりゴールまで並走してきてくれました。

スイーパーにも完走証が。実際にゴールに到着したのは、手元の時計で20:01でした。
「ありがとうございました」
そう言って握手を求めてくださったり、一緒に写真を撮ってくださったりするランナーが多く、こちらこそ恐縮してしまいます。しかしランナーにとって、少しでも役立てたなら嬉しい限りです。
人生初のスイーパー体験、正直に言って甘く見ていました。ただ走るのとは異なる大変さがあり、私はいつもこうしたスタッフの努力に支えられ、走ることを楽しめているのだな…と実感。身が引き締まる思いです。ランナーとは違った側面で大会に関われたこと、貴重な経験となりました。
ブログ更新まで日が空いてしまいましたが、ランナーの皆さま、そしてスタッフの皆さま、本当にお疲れ様でした!雨が降る寒空の下、超長時間における大会運営・参加は想像を絶するものだったと思います。私も今回頂いた貴重な経験をもとに、改めて前へ進んでいきます。
後姿登場させていただきありがとうございます!
皇居周辺・こあしす手前のあの頃は本当にくたばってましたね。
でもカラ元気と減らず口は一丁前だったでしょう?
「苦しい?いやいやキモチイイっすよ!!」
なんて言いながら歩いてたっけ。
改めてプロの文章で振り返りますと、
追い詰められたような何とも言えないあの感情が蘇ります。
51kmのエイドで人生初の最下位になってから
最後まで制限時間ギリギリの厳しいレースでしたが
ずっと気にかけてくださったスイーパーの御三方のお陰でなんとか完走し、
「苦しんだけれど楽しいレース」
にすることができました。
雨のウルトラの難しさ等、学ぶことが本当にたくさんありました。
もうちょっと強くなってまた川越のスタートゲートに立ちたいと思います。
ありがとうございました!!